東京駅丸の内方面に立ち並ぶ高層ビルのひとつ「丸の内オアゾ」内の丸善 丸の内本店。外観同様、内観もスタイリッシュかつ品のよさを感じる書店だ。
丸の内という立地もあって、訪れる客はやはり30代~40代のビジネスマンが多い。
しかし、意外にもコミックフロアでは、熱心にマンガを吟味するOLさんの姿もよく見かけるという。
今回は、忙しい日々を送っている大人たちが、忘れていたあの頃に戻れるようなマンガ4作品を、丸善 丸の内本店コミック担当の八重田幸子さんにうかがった。
丸善 丸の内本店イチオシの4冊!!
『カプチーノ』菊池まりこ
『カプチーノ』第2巻
菊池まりこ KADOKAWA/エンターブレイン \620+税
(2014年7月15日発売)
きゅんきゅんしたい女性に、ぜひとも読んでほしい本作。1話の試し読み小冊子を読んだ女性が、どんどんはまっています。先に言っておきますが、読むとにやにやしちゃうので、電車では読めません(笑)。
恋愛に超奥手な女子高校生・克美ちゃんは、友達に促されて参加したカラオケ合コンの雰囲気に耐えられず、逃げ出したくなってしまい……。なんと、たまたま通りかかった男性店員をつかまえて、彼氏だと大嘘をついちゃいます。内向的なのに、妙なところで大胆な子なんです!
でも優しい彼は、こんな突然の嘘にもつきあってくれます。そして、この出会いをきっかけに2人は本当につきあうことに。初めての恋に一生懸命な姿がたまりません!
とにかく克美ちゃんはすごくピュアなので、こんな子が恋愛したらどうなるんだろうと。そんな初々しい彼女が、初恋にとまどいながらも、ステキな女性に成長していく過程を見るのが、とても楽しいです。
現在は2巻までですが、もう3巻が待ち遠しくて待ち遠しくて……! 早く続きが読みたいです。
とくに、2人が海辺でキスをするシーンは、もう最高です!
少女マンガじゃないので、大人の女性も買いやすいと思います。女性のみなさん、自分の初恋を思い出しながら、本作でたくさん胸きゅんしちゃってくださいね。
『みえちゃんち 秀良子名作劇場』秀良子
『みえちゃんち 秀良子名作劇場』第1巻
秀良子 小学館 \552+税
(2014年9月12日発売)
これは読んですぐに、自分の小さいときまんまのお話だな、と思いました。とくに20代~30代くらいの大人たちの共感を呼んでいる作品です。
たとえばこんなエピソードが。主人公・みえちゃんが、とあるご褒美のためにはりきってお片づけやお手伝いをするんです。あとでわかるのですが、そのご褒美というのは、カップラーメンなんですよ! 今だったらすぐにコンビニで買えますけど、当時はごちそうだったんですよね。
ほかにも、拾ったお金でマンガを買ったお話など、似た経験を思い出して共感しました。母親にマンガが見つかり、最初はそのことを隠そうとするんですが、やっぱり罪悪感が勝って、最後は泣きながら正直に話します。このシーンもすごくよかったですねえ。
久しぶりに、自分の子供の頃を思い出しました。みなさんも、このマンガでぜひ童心に返ってみてはいかがでしょうか。
本作には、「みえちゃんち」以外にもいくつかお話が収録されています。そちらもまた違ったテイストでおもしろいですよ。
『子供はわかってあげない』田島列島
『子供はわかってあげない』(上)
田島列島 講談社 \630+税
(2014年9月22日発売)
ぶっとんだ設定なのに、懐かしい気持ちにさせてくれる本作。試し読み小冊子を読んで、この作品の雰囲気にひかれた大人が、上下巻一緒に購入していっています。
本作は、高校2年生の女の子・サクタさんが、同級生の男の子・もじくんの協力のもと、5歳のときに離婚して以来会っていない、父親を探すお話です。
その父親というのがすごいキャラ……。なんと人の心が読める超能力者であり、新興宗教の教祖なのです! そんな父親に戸惑っていたサクタさんですが、一緒にいるのが楽しくなってきて、だんだんもとの家に帰りづらい気持ちになっていきます。
結局数日で帰ったあと、内緒で会いに行ったことを母親に打ち明けるのですが、このシーンのサクタさんと母親の会話もすごく感動的です。
夏休みって特別な期間ですよね。新しい出会いがあって、でもその人とはもうこれっきり会えないかもしれない。まさにひと夏の想い出みたいな感じで。そんなところに、ノスタルジーを感じました。
『オルガの心臓』雨宮もえ
『オルガの心臓』第1巻
雨宮もえ 講談社 \581+税
(2014年9月5日発売)
大人が読んで、いろいろと考えさせられる作品です。雨宮もえ先生は、なんとこの作品がデビュー作! またすごい新人が出てきたなあと感心しちゃいました。
本作は、人工臓器の開発が進み、臓器売買も行なわれている世界で暮らすシャルトー姉弟のお話です。
人工臓器、臓器売買……すごく難しいテーマですよね。正直、深すぎて私自身うまく読み解くことができていない部分もあります。でも、作品のなかに織り込まれたいろんな問題提起に対して、なんとか自分なりの答えを出そうと考えながら、読み進めていく感じの作品だと思いました。
印象に残っているのは、自分の心臓を差し出しても母親を助けようとする、貧しい少年です。人を想う気持ちに金額はないんです! しかし、その少年の気持ちを金儲けに利用とする悪い大人が出てきて……。近い未来、こんな世のなかになったら嫌だなあと思いました。
シャルトー姉弟、そして研究所……まだまだ謎が多そうなので、今後の展開に注目です。