日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『クッキングパパ』
『クッキングパパ』第135巻
うえやまとち 講談社 ¥524+税
(2016年2月23日発売)
食の街・博多を舞台に繰り広げられる笑いあり、涙ありの物語『クッキングパパ』。ついに第135巻が発売された。
立派なアゴがチャームポイントの主人公・クッキングパパこと荒岩一味。このたびめでたく、新居を構えることになった。地鎮祭でアラカブ&アナゴ鍋をふるまうのは“クッキングパパ”らしいおもてなしだ。
沖縄の大学に通う長男・まことはそろそろ就活の時期だし、幼なじみの達ちゃんは結婚を決めた。連載開始から30年を経てなお、『クッキングパパ』ワールドは動き続けている。
マンガの世界のなかで、登場人物たちはみんな、生きているのだ。そして、おいしいものを食べている。
『クッキングパパ』を読むと気持ちいいのは、「うまい」と思う気持ちを100パーセント肯定しているからだと、私は思う。「うまいもん食べんと、しょうがなかろうもん!」っていうパワーに満ちている感じ。
ドキドキハラハラさせられたり、大笑いさせられるわけじゃないけど、読んでてすごく心地いい。「新刊が出た! 買わなきゃ」と思うタイプの本じゃない。
でも、書店で見かけたら、「あった、あった」とにんまりしてしまう、この感じ。
ここに、博多の街を舞台に、人間が生きる姿を描いたマンガがある。その安心感が、それこそクッキングパパの体格のようにどっかりと、心に根づいている。
第135巻で、福岡県出身の私に一番刺さったセリフは、「オレは思うんだけどな 東京で暮らしたヤツは ずっと九州・博多にいるヤツとどこか違うんだよな いい意味でもそうじゃない意味でもな……」だった。
でも、クッキングパパは大学卒業後の進路に迷う息子に「おまえが帰る場所はいつでもここにあるから どこへでも力いっぱい翔んでいっていいんだゾ!!」と声をかけた。
よし! まだまだ東京でがんばれる。たまにはホークス戦を観にいきながらね。
<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。