365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
3月28日はスリーマイル島原子力発電所事故が起こった日。本日読むべきマンガは……。
『白泉社文庫 三原順傑作選 '80s』
(『Die Energie 5.2☆11.8』所収)
三原順 白泉社 ¥780+税
本日3月28日は、1979年にスリーマイル島(TMI)原子力発電所事故が起こった日だ。
原子力発電所での初めてとなる重大事故が起こった7年後の1986年にはチェルノブイリ原子力発電所事故が、そして32年後の2011年には福島第一原子力発電所事故が起こることになる。
そんな今日は『はみだしっ子』で知られる早世の漫画家・三原順の中編「Die Energie 5.2☆11.8」(『三原順傑作選80's』収録)を取りあげたい。TMI事故から3年後の82年に月刊少女マンガ誌「LaLa」に掲載された作品だ。
舞台はアメリカ。TMI事故の後も原子力エネルギーを推進しようとする電力会社への脅迫事件を軸に、電力会社の社員、市民運動家、そしてテロリストと電力会社内の協力者といった様々な人々の思惑と思想がぶつかりあう様を描く。
たとえば原発に反対する環境保護団体の女性はこんなふうに問う。
「しかも もし事故を起こしても損害賠償はほとんど国が…つまり私たちの税金で支払わせるんでしょう?
電力会社の負担分は電気料金に上乗せしてまた私たちに払わせるんでしょう?」
「電力会社が潰れたりはしないのね?」
福島第一原子力発電所事故以後の世界に生きる身からすると、このセリフがほとんど現実になってしまったことに背筋が寒くなる。
しかも驚くことに、本作はこうしたセリフで原発を批判して終わるものではない。
主人公となるのは、そのような批判を受け、そして危険性を理解してなお、原子力をつくろうとする電力会社の側の人間なのだ。
エネルギー問題に答えを出すことのどうしようもない困難さこそが本作では描かれる。
福島第一原子力発電所の事故で人の住めない土地が生まれてなお、原発を巡る議論が割れている現在こそ、本作のアクチュアリティは増していると感じる。
登場人物を同じくする『X Day』とともに読まれたい。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas