365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月11日は中央線開業記念日。本日読むべきマンガは……。
『中央モノローグ線』
小坂俊史 竹書房 ¥743+税
4月11日は「中央線開業記念日」。
1889(明治22)年のこの日、JR中央線の前身である甲武鉄道の新宿~立川間が開業。
立川・国分寺・境(後の武蔵境)・中野の4駅が開設された。8月11日には立川~八王子間が開業。新宿~八王子間の運転が開始された。
なんと、中央線の開業は19世紀の話ですよ! 開業から、はや足かけ130年、日々鉄道が運行されているこの事実に今さらながら驚き!
そんな「中央線開業記念日」にうってつけの作品が、4コマ界のプリンス・小坂俊史の異色作『中央モノローグ線』だ。
中央線といえば、各駅ごとに違う個性を持った街が連なることで有名な路線。中央モノローグ線』は、そんな中央線沿線に生活する8人の女性を描いたオムニバス4コマで、タイトル通り各パートの主人公のモノローグ(ひとり語り)で綴られているのが特徴。
著者自身も、中央線にも駅がある中野に10年ほど住んでいたという。
中野在住のイラストレーター、高円寺の古着屋店主、阿佐ヶ谷勤務のOL、荻窪のシングルマザー、西荻窪になんとなく住む脇役劇団員、吉祥寺でオトコに振られ続ける女、三鷹から都心の大学へ通う文学部生など、駅の個性にふさわしい人物が登場する。
個人的に印象深いのは武蔵境に住む中学生・キョウコ。
彼女は三鷹と武蔵境との間に、「中央線っぽい/中央線っぽくない」という目に見えぬ壁を感じて、三鷹以東の新宿寄りに強い憧れを抱いている。この、「中央線っぽさ」のボーダーラインは人によっても異なるだろうが、開業当時の武蔵境が「境」という名前だったことを考え合わせるとなかなか興味深い。
通常の4コママンガがキャラクターの行動や出来事が中心に描かれているのに対し、この作品は4コマまんがの登場人物たちの心情を中心に、行間を埋めていくかのように描かれている。
それでいて1本1本がきちんと4コマものとして成立していて投げっぱなしになっていないのが、さすが4コマ王子の名を欲しいままにする小坂俊史なのだ(4コマ王子の名で好き勝手にいじられるともいう)。
じつはこの『中央モノローグ線』は、小坂俊史のモノローグ3部作の1本目といえる作品。
本作を気に入られた方は、中野在住のイラストレーターの遠野での生活を描いた『遠野モノがたり』、世代も場所もバラバラな女性たちを描いた『モノローグジェネレーション』へと手をのばしてみてはいかが。
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。