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「ネクストブレイクの予感がある」マンガベスト4 【あの書店に聞く!! COMIC ZIN】

2014/10/16


オタクの聖地・秋葉原にそびえたつCOMIC ZIN 秋葉原店。コミティアやコミックマーケットの新刊の入荷も早く、同人作品も豊富に取り扱う、アキバ界隈のマンガ好きなら知らぬ者のいない書店だ。
独自のタナ展開で、ブレイク直前の作品もたくさん取り扱っている。

今回は、COMIC ZINの商業誌部門責任者である塚本浩司さんに、次にブレイクする予感に満ちた商業誌や同人誌を4作品うかがった。


入り口からすぐ見えるところに、サイン色紙や特大ポスターが飾られている。

入り口からすぐ見えるところに、サイン色紙や特大ポスターが飾られている。


COMIC ZINイチオシの4冊!!

『シャーリー』森薫

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『シャーリー』第2巻
森薫 KADOKAWA/エンターブレイン \620+税
(2014年9月13日発売)


ZINのイメージキャラクターを描いてくださった森薫先生のライフワーク!
20世紀初頭のロンドンを舞台に13歳のメイド・シャーリーと女主人であるベネットさん2人の日常を描いた本作。第1巻から11年ぶり、待望の2巻です!

読んでまず思ったのは“思い”というか、“怨念”の強さですね(笑)!
自分はマンガの感想を言う際にこの“怨念”という単語をよく使うのですが、これは作家さんの思いの強さ、「これが描きたいんじゃー!」という表現の欲求のようなものに対する尊敬の念をこめて使っているんです。

森先生の読者の方なら共感してもらえると思うのですが、森先生の作品はこの“怨念”みたいなものがマンガを通じて伝わってくるというか、なんか紙の上で具現化されているように思えるんです。『ジョジョの奇妙な冒険』にたとえるなら、スタンド使いのスタンドがそこに見えているようなものでしょうか(笑)。

そんな森先生の作品で初めてスゴみを感じたのが『エマ』の着替えのシーン。もう話の冒頭からずっとエマがメイド服に着がえるだけなんです! それだけで丸々数ページ使って描かれている回だったんですが、なんかもういろんなものを通り越して感動しました。 こんな風に読者に伝わるぐらいに“怨念”が強いからこそ、僕たち読者は森先生の作品に惹かれるんだと思います。

『エマ』や『乙嫁語り』は連載を通じて、そうした思いの強さをほぼ毎月リアルタイムに感じていたのですが、この『シャーリー』ではそんな思いの強さに加えて、森先生が11年かけて積み上げてきたモノがビンビンと伝わってきて、改めて感動しましたし、なんでしょう、「ずっと好きでいてよかったなー」とうれしくなりました。

2巻が発売された影響で、1巻も一緒に売れています。1巻発売当時小学生だった人は、もう社会人ですからね。当時は『シャーリー』の存在を知らなかった方も、これを機会に買ってくれている方も多いようです。『乙嫁語り』からの読者もこの機会に『シャーリー』はもちろん、森先生のほかの作品もぜひ読んでもらいたいですね。


『コミティア30thクロニクル』コミティア実行委員会(編)

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『コミティア30thクロニクル』第1集
コミティア実行委員会(編) 双葉社 \1500+税
(2014年5月14日発売)


創作マンガ同人誌即売会「コミティア」の30年の歴史が詰まった作品集。第1集、第2集と発売中でオススメですが、11月には最終巻となる第3集が発売されます。毎回掲載作家さんはすごい方ばかりなので、どこからでもいいのでぜひ読んでもらいたいですね。

同人誌って一期一会って言われているように、会場で偶然出会った作品が自分の中で“アタリ”だったりすると本当にうれしいんですよね。その一方で、その時に出会えなかったりするともう読めないものがほとんどで、だからこそ出会った作品はとても愛おしく、まるで宝物に出会ったようなものに思えます。

この作品集は内藤泰弘先生や武内崇先生などコミティアの歴史を彩る作家さんたちの初期の作品、“あの時出会うことができなかった”作品が読めるという意味で非常に貴重なものだと思っています。

まだ誰も知らない、見つけていない可能性。宝の原石のような才能を探してみることは即売会の醍醐味ですが、本作を読んでみんな最初は可能性から始まったんだ、ということを知ってもらえたら、そしてそんな可能性が隠れているコミティアという場所に興味を持っていただいたら、今度はぜひ会場でその醍醐味を味わってほしいです。

知っている作品を買うという点では、検索して買えるネット通販が便利なことはもちろんですが、知らないナニカに出会えるという意味では即売会は本当に楽しいですし、ワクワクします。そしてもし宝物になるような才能に出会えたらそれはとてもすばらしいことだと思うんです。

僕ら書店もそういう即売会のようなワクワクするような空間をがんばって目指していきたいと思っています!


『あじさいタウン』木村リノ

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『あじさいタウン』第1巻
木村リノ マイクロマガジン社 \648+税
(2012年1月29日発売)


2年以上も前に発売された作品ではありますが、当店では現在も平積みしています。まあこの作品についてはほかのスタッフに申し訳ないぐらい個人的な思い入れが強すぎるのですが、でも紹介させてください(笑)。

自分にとってはおもしろいとかそういうのを越えて、ともかく相性がいいというか、ずっと前から友達だったと思えるような作品です。
主人公たち4人が初めてバンドとなるスタジオセッション。ライブ前の楽屋。宇宙人・ヌっさんが音楽に出会ったきっかけ。どれもが共感できて言葉のいらない友達のような感覚を与えてくれました。

そしてなによりもすごいのが、彼らバンドが実際に存在していること。
「あじさいタウン」
彼らは実際にいるんですよ!

正直、初めは彼らの音楽を聴くのは怖かったんです。もし聴いて変な音楽だったらどうしようとビビっていました。でも思いきってyoutube にアクセスして、「ロンリーナイトフィーバー」という曲の出だしのベース音を聴いた瞬間に「あああ!このベースだあー!」と、劇中のベースで始まるセッションシーンを思い出して感動したんです。けだるそうに歌うボーカルもイメージ通りで、本当にうれしかった。いやホッとした? ともかく感動しました。

それ以来、彼らの音楽を何回も何回も聴いているんですが、そのたびに「あー、ここのギターはヌっさんかな?」「実々子、こんな感じで弾いているのかな?」「楽しそうにコーラスしているなあ」と彼らが演奏しているシーンを妄想しちゃうんです。彼らの音楽を聴いたことでもっともっと好きになりました。こんなマンガ初めてです。

本当にライブに行きたい! 友達になりたい! 大好きなマンガ、そして大好きなバンドです!
マンガと音楽、ぜひ両方お楽しみください。

「ロンリーナイトフィーバー」(あじさいタウン)


『灰色の春』小坂俊史

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『灰色の春』
小坂俊史 \400+税
(2014年8月31日発売)


最後に同人誌をひとつ紹介させてください。商業誌でも活躍されている小坂俊史先生の作品です。震災に対して先生自身が持たれた距離感が非常に真摯に描かれ、共感というか、変な言い方ですが優しくしてもらったと思える作品でした。

僕自身は茨城の人間で震災の時、多くの方と同じで帰宅に困り、自宅もしばらく断水があったり、多少の被害はあったのですが、それでもどうにもならないことはなくて、この震災に対してどこか距離がある感じがしていました。
それに対して小坂先生は震災の時、偶然にも岩手に住まれていて、被災されたわけですが、岩手でも津波の被害に遭われた沿岸部ではなく内陸部ということもあり、震災に対する距離感に戸惑っていたことが本作では描かれていて、その点がとても共感できたんです。

また本作では小坂先生は先生のマンガのキャラクターを使ってご自身の体験・記憶を描かれたわけですが、このキャラクターを通じたことにより、僕自身は本作をよりフラットに読むことができました。なんというか余計に胸にしみたような気がしました。

作中、震災直後に「震災の現実」を知らないフリをしていた先生が、「震災の現実」と向き合う過程が描かれているのですが……この何も知らないままでいてはダメなのか、という逃避の思い。そして「震災の現実」を知った後に襲ってきた無力感。現実に対して背中を向けたくなる気持ち。なにげない風景のなかで急に襲ってくる不安。

同じ思いを持った方は少なくないと思います。自分はまさにそうでした。 この作品を読んで、自分が持っていた不安、恐怖、逃避、そうしたものを理解してもらった、話を聞いてもらったような気がしました。優しくされたんです。

なにかを解決する話ではありません。でもあの頃の自分、そして現実を知ってしまった自分の背中をさすってくれるような優しい作品だと思います。


COMIC ZINからのお知らせ!!

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森薫先生にデザインしていただいたZINイメージキャラクター・真理恵さんと環ちゃん。COMIC ZINの5周年を記念して、特別に描き下ろしていただいたイラストが載っているバインダーが絶賛発売中です!
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店舗情報:COMIC ZIN 秋葉原店

〒101-0021

東京都千代田区外神田1-11-7 高和秋葉原ビル

電話:03-5298-5392

営業時間:11:00 ~ 22:00、土日祝10:00 ~ 22:00

定休日:年中無休

URL:http://www.comiczin.jp/

   http://shop.comiczin.jp/(通信販売)

Twitter:@comiczin

店舗情報:COMIC ZIN 新宿店

〒160-0023

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