365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月13日は決闘の日。本日読むべきマンガは……。
『柳生十兵衛死す』第1巻
山田風太郎(作) 石川賢(画) リイド社 ¥619+税
本日4月13日は、慶長17年(1612年)旧暦4月13日、巌流島にて宮本武蔵と佐々木小次郎という2人の剣術家が決闘を繰り広げたことから「決闘の日」とされている。
そんな「武蔵デー」にちなんで紹介したい漫画家、それが石川賢である……と、ここらへんで熱心な「このマンガがすごい!WEB」読者であれば、「去年も決闘の日で石川賢をとりあげただろ、同じネタを何度も使い回すな!」とツッコミを入れてくれるかもしれない。
いや、ごもっともな指摘である。しかし、少々言い訳をさせてもらうと、石川賢が描いている武蔵マンガはなにも『魔界転生』(原作・山田風太郎)だけではない。
様々な作品で幾度も武蔵を取りあげており、代表作であるロボットマンガ『ゲッターロボ』(原作・永井豪)においても、主人公のひとりに「巴武蔵」という名前を当てるなど、武蔵に対する思い入れは深く、いわば「武蔵漫画家」とでも呼べる作家なのだ。
今回はそんな石川賢作品のなかでも特にパンチの強い2つの武蔵マンガを紹介しよう。
能楽曲による時空転位をテーマにしたSF伝奇時代劇『柳生十兵衛死す』(原作・山田風太郎)では、なんとパラレルワールドの「巌流島で佐々木小次郎に敗北した宮本武蔵」が登場。
その設定だけでもなかなか強力なのだが、この武蔵、なんと時空間移動の際に誤って宇宙戦争まっただなかの未来世界にたどりついてしまう。未来世界でサイボーグボディに強化改造されてしまうというハチャメチャなキャラクターになっており、巨大ガトリング砲で空中戦艦を撃墜するシーンは圧巻のひと言。
こうなるともはや剣術の達人という原型すら留めていないが、「宮本武蔵は強い」という命題を石川賢なりにつきつめた結果であるともいえる。
もうひとつの作品『武蔵伝 異説剣豪伝奇』は、幕府内部の権力闘争を御前試合で決着させるべく宮本武蔵を呼び出すものの、呼びかけに応えた宮本武蔵は十名以上居た……というユニークなあらすじの作品だ。
ハンサムな宮本武蔵、ワイルドな宮本武蔵、老人宮本武蔵、僧侶宮本武蔵、女性宮本武蔵など、ありとあらゆるスタイルの宮本武蔵が登場。
はては四腕異形の宮本武蔵も現れるという始末で、読者のなかに存在する「宮本武蔵」という概念がゲシュタルト崩壊寸前まで追いこまれる異色作となっている。
どちらの作品も宮本武蔵という大人物に対する石川賢の狂気じみた偏愛が炸裂したダイナミックな傑作であり、前回紹介した『魔界転生』とあわせてぜひ読んでもらいたい。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。