特定ジャンルに詳しい「目きき」の人たちに、テーマ・著者・出版社……といったカテゴリ別に、必読のマンガ作品を教えてもらうコーナー、その名もズバリ「目ききに聞く」!
かつて中国春秋時代の思想家・孔子は「君子は怪力乱神を語らず」として、常人の理解を超えるものには触れるべきではない……と語りました。
しかし現在! マンガというメディアは、そのビジュアルや自由な手法から、まさに怪力乱神を語るにふさわしく、昨今の伝奇アクションマンガの隆盛は、当然の流れだと言えるでしょう。
今回は、偏食CD&ブックレビューを掲載しているブログ「(怒りの以下略)」の管理人・さすらいさんに、「荒唐無稽!」「奇想天外!!」がほめ言葉になるような、読者に衝撃を与える「超伝奇SFマンガ」を教えていただきました。
さすらいさんイチオシの3作品
『柳生十兵衛死す』山田風太郎(作)石川賢&ダイナミックプロ(画)
『柳生十兵衛死す』第1巻
山田風太郎(作)石川賢&ダイナミックプロ(画)
リイド社 ¥619+税
(2008年3月28日発売)
原作で山風先生が散りばめたSFネタをさらに広げまくり、石川先生のケレン味をぶち込みまくった結果、奇想×奇想でとんでもなくエキサイティングに突き抜けた豪快&痛快バトル絵巻。
原作補完というよりは、もはや本編の展開よろしく「サイボーグ化」と呼ぶのがふさわしい。
「スーパー山田風太郎大戦」状態な、最高にして最凶のアレンジに、思わずアドレナリンがドバドバと噴き出します。
『五大湖フルバースト 大相撲SF超伝奇』西野マルタ
『五大湖フルバースト 大相撲SF超伝奇』上巻
西野マルタ 講談社 ¥600+税
(2012年2月9日発売)
相撲がアメリカの“国技”となった近未来。奇病に蝕まれすべてを失おうとしていた力士・五大湖は、謎の女科学者の手により恐るべきサイボーグと化した!
彼の大暴走を止めるのは、永き眠りにあった伝説の横綱!
科学の粋と伝統の技が大激突を繰り広げる本作の根底にあるのは親子愛であり、意地であり、飽くなき「強さ」への渇望です。
超が付くほどにストレートなストーリーながら、西野氏のケレン味と剛直な力強さでぶっちぎった画風が、愚直なまでにストロングな説得力で迫ってくるのです。
『ローン・スローン』フィリップ・ドリュイエ(著)ジャック・ロブ/バンジャマン・ルグラン(作)原正人(訳)
『ローン・スローン』
フィリップ・ドリュイエ(著)ジャック・ロブ/バンジャマン・ルグラン(作)原正人(訳)
小学館集英社プロダクション ¥4,000+税
(2014年4月23日発売)
フランスの鬼才バンドデシネ作家が描きあげた、畢生の大作絵巻。
その常軌を逸した描き込み量、破格のスケール感、まばゆい色彩感覚が織りなす黙示録的なヴィジョンは、怨念めいたものすら感じさせるすさまじさ。
脳味噌の処理が追いつかなくなるほどに、そして「圧倒的」という言葉ですらも言い尽くせないほどに、有象無象のエネルギーが眼前にぶちまけられています。
かつてない視覚体験を約束する1冊。