複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。
今回は、「人類初、重力波の観測に成功」について。
『気が遠くなる未来の宇宙のはなし』
佐藤勝彦 宝島社 ¥1,200+税
(2013年11月16日発売)
去る2月11日、アメリカを中心とした国際研究チームが、重力波をはじめて直接観測することに成功したと発表した。
なにしろ「ノーベル賞に値する成果」というから、それはそれはビッグサプライズだったわけだ。
とはいえ、多くの人にとっては「重力波ってなに?」って感じではないだろうか。
そもそも重力波とは、アインシュタインがおよそ100年前に「一般相対性理論」で提唱した現象だ。
質量を持ったものであれば、存在するだけで空間と時間に歪みができ、重ければ重いほどその歪みは大きくなる。そして、物体が移動すると時空の歪みは変化し、その変化は光の速さで波のように伝わっていく。
この変化の波のことを重力波と呼ぶわけだ。そして重力波は、大きな質量と重力を持つ天体が光速に近い速度で運動するときに強く発生する、とされる。
今回観測されたデータは、およそ13億年前、太陽の約36倍のブラックホールと、太陽の約29倍の質量のブラックホールが衝突合体した際に放出された、とのこと。
う~ん、単位が大きすぎて、よくわからんぞ。
ともあれ、発表のタイミングがいい。
毎年この時期は、宇宙を題材にした映画が大ヒットするシーズンである。
一昨年は『ゼロ・グラビティ』、昨年は『インターステラー』、そして今年は『オデッセイ』が絶賛公開中だ。
単に2月下旬のアカデミー賞に合わせている……という映画界の事情はさておき、世界的に宇宙熱が高まるタイミングで発表されたことは意義深いのではないだろうか?
といったわけで、マンガ界だって負けてられない。
今回は、重力波を観測しやすそうなマンガを大特集する。
『双葉文庫名作シリーズ 真ゲッターロボ』
永井豪(作) 石川賢とダイナミックプロ(画) 双葉社 ¥800+税
(2002年9月17日発売)
まずは『真ゲッターロボ』からゲッターエンペラーだ。エンペラーといってもイカの耳ではない。皇帝のほうである。
ゲッターエンペラーはゲッターロボの究極進化体。未来の世界では宇宙で大暴れしており、惑星を片手で握りつぶせるほどの巨大さを誇っている。
太陽の36倍の質量を誇るブラックホールに対抗できるとしたら、ゲッターエンペラーをおいてほかにない。
なにしろ永井豪×石川賢は、スケールの大きな発想をさせたら天下一品。マンガは荒唐無稽だってOKなんだぜってことを、あらためて認識させられるはずだ。
なんというファンタジー!
『リングにかけろ1 完全版』第1巻
車田正美 集英社 ¥590+税
(1998年7月発売)
続いては車田正美『リングにかけろ』から剣崎順。
彼の必殺技・ギャラクティカファントムは、発電所で高圧電流をぶん殴りまくることで修得した奇跡のフィニッシュブローだ。
電力会社の社員なら顔面蒼白待ったナシである。
重力波だけでなく、電磁波もバリバリ飛ばしてそうだ。
パンチを放った瞬間、バックには銀河系が出現するので、やっぱり宇宙のファンタジーである。
『Dr.スランプ 完全版』第1巻
鳥山明 集英社 ¥1,048+税
(2006年10月4日発売)
鳥山明『Dr.スランプ』の則巻アラレは、高感度重力波ガールとして激推ししたい。
ゲンコツで地球をまっぷたつに割るので、そのたびに全宇宙に向けて重力波を飛ばしまくりだ。
これほどの超高性能アンドロイドを作ってしまうのだから、アラサー独身童貞科学者(則巻千兵衛)の情念はすさまじい。
しかし則巻アラレは、その能力を有効活用することもなく片田舎でウンチをつついているのだから、なんともファンタジーあふれる世界観である。
そして惑星破壊といえば、タレント・小倉優子さんの母星「こりん星」も忘れてはならない。本人は忘れてほしいかもしれないが、われわれは忘れてませんよ!
2008年にプロレス団体「ハッスル」に参戦させられた際には、こりん星爆破マッチを展開。観客一同……というか当の本人も、完全に困りんこな興行であった。
こりん星は地球から何光年離れているのかは定かではないが、爆破時に放った重力波も、いつかは観測できるのだろう。
『小倉優子写真集 りんごともも』
小塚毅之(写真) 白泉社 ¥2,800+税
(2002年5月24日発売)
なお、母星が爆破して地球で活躍するという点では、小倉優子さんはクリプトン星出身のスーパーマンとまったく同じ境遇だ。そんな在日本こりん星人の小倉さんを見出したのは、「ヤングアニマル」(白泉社)である。
キャリアの早い時期からグラビアに登場し、なんと4年連続で「ミスヤングアニマル」に選出された。まさに「『ヤングアニマル』のゆうこりん」だったわけだ。『ベルセルク』や『3月のライオン』や『自殺島』といった骨太な作品を世に送り出す一方で、ほかのマンガ誌とはあきらかに一線を画す独自基準でグラビアアイドルを発掘する姿勢もすばらしい。
ちなみに2011年から4年連続でミスヤングアニマルになり、ゆうこりんの記録に並んだのは篠崎愛さん。やっぱり「ヤングアニマル」は独自路線でファンタジーがあります。
今回の重力波の観測によって、関係者は「天文学の新時代が幕を開けた」と将来への明るい展望を口にしている。
科学技術が発展すれば、それだけ未来への扉が開けていくのだ。
アース・ウインド・アンド・ファイアーのモーリス・ホワイトは亡くなってしまったばかりだけれど、「宇宙のファンタジー」は続いていくんだぜ。