日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ワンダー・AZUMA HIDEO・ランド』
『ワンダー・AZUMA HIDEO・ランド』第2巻
吾妻ひでお 復刊ドットコム ¥2,400+税
(2016年3月18日発売)
2015年2月に刊行され、好評を博した『ワンダー・AZUMA HIDEO・ランド』の第2弾が増ページで登場。
デビュー前の投稿作品に吾妻自ら発行した同人誌やファンジン掲載作品、雑誌への単発寄稿作品、原稿紛失作品、美術展出品、連載作品の単行本未収録エピソード、2015年11月に執筆したばかりの最新作品……と、ファンもコンプリート困難なレアものがぎっしり。
可能なかぎり原稿を探索して、初出時よりもクオリティの高い誌面で収録。『風のひょう太郎』、『ゴタゴタマンション』といった2色刷り作品はそのまま忠実に再現するなど、隅々までこだわり抜かれている。
なかでも、雑誌「高一キャンパス」に収録された高校時代の投稿1コママンガをはじめ、デビュー前後の非ストーリーもの作品は、絵のタッチこそ異なるが、のちのナンセンス&ブラックぶりをすでに予感させるもので、なるほどな……としみじみ感嘆。
『ファンクラブ集会』、『がんばれ小さな本屋さん』などの文字モノ、米沢嘉博の追悼関連に『読書絵日記』シリーズも収録され、「美少女モノ」こそ少ないが、じつに吾妻ひでおらしい、バラエティに富んだ内容がうれしい。
装幀も美しく、吾妻ファンなら外せない1冊。『失踪日記』でハマったというという初心者も、完売しないうちに入手がベターだ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69