日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『かなたかける』
『かなたかける』第1巻
高橋しん 小学館 ¥552+税
(2016年3月30日発売)
特別にスポーツファンではなくても、高校野球(春のセンバツ・夏の甲子園大会)と、年始の箱根駅伝はなんとなく見てしまうという人、多いのではないだろうか。
箱根駅伝は高校野球同様に歴史の古い大会だが、近年じわじわ人気が高まってきた模様。
そもそも日本発祥の競技で、唯一の国際大会は2014年で終了しているのだが、国内では箱根以外の駅伝大会の注目度も上がり市民ランナーが参加できる大会も増えてきた。フルマラソンはハードルが高くても、駅伝ならラン仲間を募って挑戦するにもいいかも!?
箱根の町を舞台とした駅伝マンガ『かなたかける』の主人公は小学生。
東京から越してきた美少女・かなたは、通学バスに乗らずに毎日走って登校するほど走るのが大好きな少女。走っている時だけは楽しそうだが、学校ではだれとも交わらず……同じクラスのはるとはそんな彼女がなんだか気になってしょうがない。
しかし、かなたはきれいなフォームで走るわりにものすごい鈍足。
それでいて“人の背中を追い抜くのが好き”で意外や負けず嫌いとは、なかなか捉えどころがない。
さて、この資質が駅伝という競技のなかでどう磨かれていくのやら?
ちなみに本作の著者・高橋しんは、なんと箱根駅伝の出場経験を持っているという。
陸上を語る知識、ランナーのリアルな目線や心理も読ませるが、中学生でも高校生でもない“小学生”ならではの躍動感が描かれているのが新鮮だ。
まだいっぱしの“アスリート”とはいえない小学生の身体性と感性が、駅伝という競技を通してどのように変化していくのか楽しみである。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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