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『僕と君の大切な話』第1巻 ろびこ 【日刊マンガガイド】

2016/04/21


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『僕と君の大切な話』


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『僕と君の大切な話』第1巻
ろびこ 講談社 ¥429+税
(2016年3月11日発売)


おもしろいマンガを紹介する。ろびこの『僕と君の大切な話』だ。
しかし、本作のおもしろさを伝えるのは、簡単なようでいてなかなか難しい。

ひとまずひと言で紹介するとすれば、本作は駅のホームのベンチを舞台に、理屈っぽい眼鏡男子・東司朗(あずま・しろう)と、彼に恋するストーカー系残念美人・相沢のぞみの2人の会話を中心に(たまにゲストキャラも加えつつ)展開するシチュエーション・コメディである、とまとめることができる。

2人が交わす会話のテーマは「男女の違い」だ。
たとえば、女の子が投げかけがちな共感を求める、しかし少なからず男性にとっては何が求められているかわからず返事に困ってしまうような、他愛もないメールや会話をめぐってであれば、
「あなたの愛を確かめているのです。〔中略〕
 それがわからないのはちゃんと彼女のことを考えてないからだって女は思うわ!」
「なぜ君たち女は男を試す!!
 これじゃ付き合ってる限り男はロープ1本で綱渡りさせられてるようなものだ!!」
「付き合ったこともないくせに
 それを言うなら男の人だって付き合う前は連絡も返事もマメにするじゃない
交際が始まったからってなぜ投げ出すの!? だから女が不安になるのよ!!」
「そっちこそ付き合ったこともないくせに!!」

とこんな感じに、ときに言い争いになりながら、ときに異様なまでの生々しさを宿しながら、男女の思考回路の違いをめぐり語りあう。
ここには、男女を問わず思わず「あるある」と頷いてしまうようなすれ違いのシチュエーションがぎっしりと詰まっている。

また背景となる駅の掲示板に散りばめられた、日によって変化する小ネタなども、見つけると思わずにやりとしてしまう要チェックポイントだろう。

――と本作のおもしろさを説明するのはとても簡単だ。
しかし、なぜ冒頭で「簡単なようでいてなかなか難しい」と書かざるをえなかったかと言えば、この種の、作品の特徴をひと言で紹介できる、ひとひねりしたキャッチーな設定が売りの注目作という枠組みには収まりきらない、そこからはみ出す余剰の部分にこそ、傑作『となりの怪物くん』の著者・ろびこ独自の魅力が炸裂しているように感じられるからだ。

それを明確にするためにも、もっと続きが読みたい。

さしあたって、巻末の予告によると第2巻からは舞台を変え、キャラクターも増やした「学校生活編」がスタートするという。
テーマを変えたシチュエーション・コメディ(第1巻ラストのお弁当の場所が舞台になる?)を継続するのか、はたまた学園ドラマを展開させるのかはまだ確認できていないが、絶対におもしろくなるという確信だけは、今のうちから伝えておきたい大切な話だ。



<文・高瀬司>
批評ZINE『Merca』(アニメルカ×マンガルカ×ジャズメルカ)主宰。アニメ/マンガ論を『ユリイカ』などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
TwitterID:@ill_critique
Merca公式ブログ

単行本情報

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