日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『六道の悪女たち』

『六道の悪女たち』 第5巻
中村勇志 秋田書店 ￥429+税
（2017年7月7日発売）

不良ばかりの亞森高校に通う気弱な少年・六道桃助（ろくどう・とうすけ）は、祖父から送られた巻物のせいで悪女から無条件に好かれる能力を手に入れる。
最強最悪のスケバン・向日葵乱奈(ひまわり・らんな)、亞森高校を仕切る番長・幼田小百合(おさなだ・さゆり)らに懐かれた六道はそのたびに騒動に巻きこまれるが、事件を通じて意外な男気を見せたことで次第にまわりにも受け入れられていく。
悪女に好かれる力のせいで爆走お嬢様・姫野莇美(ひめの・あざみ)から好かれた六道は、莇美を手助けすることで間接的に不良チーム・鬼島連合のNo.3を更正させた。
鬼島連合との全面対決は免れないと緊張が高まるなか、なんと総長の松ヶ宮童子（まつがみや・どうじ）を筆頭に、鬼島連合の幹部全員が亞森高校に転校してきた。
警戒する六道たちだったが、転校してきた鬼島連合の幹部たちは意外にもフレンドリーで……？

「週刊少年チャンピオン」で連載中のバイオレンスラブパニックマンガの第5巻。
この巻ではついに鬼島連合と全面的な戦いが勃発か!?
と思いきや、女生徒たちを手玉に取る男装の「姉」・菫雷乃(すみれ・らいの)から告白され、惚れた男を叩き壊すことに快感を覚えるビッチ系女王様・椰子谷唯（やしや・ゆい）から告白され……と、あいかわらず六道は望まぬ好意を寄せられまくり。

鬼島の総長・童子も、亞森高校の生徒にちょっかいをかける近隣高校のヘッドをツブしたことで生徒たちからの支持を受け、鬼島連合は亞森高校の日常になじんでいく。
学園祭に向けてクラスで演劇（「桃太郎」）を演じることが決定し、六道が夢見ていた楽しい高校生活が実現されたかのような日々が続く。
学園コメディものとしての表情が強調されつつ、しかしどこか不穏な影がちらつく描写が印象的だ。

鬼島連合の本当の目的は、2年前にたったひとりで鬼島連合を壊滅させた乱奈を引っこ抜くこと。
ヒロインでありながら今までその身上について語られてこなかった乱奈だが、かつて乱奈が属していたレディースの暴走族・チーム竜宮が登場する。
無口で不愛想なのは今も昔も変わらない乱奈だが、チーム竜宮のメンバーには友情と呼べる感情を抱いていたようだ。
乱奈の加入で勢力を伸ばすチーム竜宮。そこに襲い掛かってきた鬼島連合からチームを守るため、ただひとりで鬼島連合を壊滅させ姿を消したのが乱奈だった。
そして乙姫の存在こそが、童子が待ちかまえていた「最後のピース」だったらしい。
学園祭に向けてクラス一丸となり、このまま何事もなく進んでいくかに見えた日常が、たった1枚の写真で瓦解していく。
いよいよ本性をむき出しにする鬼島連合に、乱奈と六道は立ち向かうことができるのか？
事態は風雲急を告げる！

それにしてもあいかわらずギャップの激しいキャラクターたちは、たいへんかわいらしい。
「弟」から「女の顔になってるぜ…」と指摘されてしまう「姉」・菫雷乃。
学園祭の演劇で「桃太郎」を演じることが決まり、「おじいさーん」と六道に駆け寄る乱奈。
2人とも普段とのギャップある表情がとても魅力的だ。
でもこの巻で一番ギャップがあったのは、雷乃にメイクされて女の子になった六道だったり。
こちらもぜひご確認いただきつつ、嵐の前の予兆に震えていただきたい！

＜文・秋山哲茂＞
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』（小学館）、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進！』（徳間書店）など。学年誌の傑作ウルトラ記事を集めた新刊『学年誌 ウルトラ伝説』が発売中！4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士（見習い）。