日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『六道の悪女たち』
『六道の悪女たち』 第3巻
中村勇志 秋田書店 ¥429+税
(2017年4月7日発売)
不良だらけの亞森高校で、肩身の狭い高校生活を送っていた六道桃助(ろくどうとうすけ)。
平和で楽しい学園生活を送りたい六道だったが、亡き祖父から届いた巻物のせいで悪女に惚れられる力を手に入れてしまい、予測不可能の波乱の日々が幕を開ける。
「週刊少年チャンピオン」で連載中のバイオレンスラブパニックマンガの第3巻。
第1巻では“化け物”と恐れられる最強最悪のスケバン・向日葵乱奈(ひまわりらんな)、第2巻ではどこから見ても小学生にしか見えない亞森高校の女番長・幼田小百合(おさなださゆり)など、様々な大物悪女が登場した。
第3巻に登場するのはお嬢様高校に通う姫野莇美(ひめのあざみ)。
しかし、おしとやかで美人で、まるでお姫様のような莇美は、今までの悪女たちとは違いまったく悪女感がない。
だが、莇美は自作の制服を身にまとい、自作の白バイにまたがり、勝手に白バイ警官に扮する常識はずれのお嬢様だった。
彼女が憎むのは暴走族。莇美にとって、公道を荒らし市民を危険にさらす暴走族は排除すべき存在なのだ。
そんな彼女の前を、押しつけられたお下がりの族車にまたがる六道が通りかかる。
当然警棒を振りあげ襲いかかる莇美だったが、下品な改造バイクにまたがった六道が、彼女には白馬に乗った王子様に見えた。
なぜか!?
それは彼女も悪女だから。
莇美の本当の狙いは、不良集団“鬼島連合”のNo.3布留川葵だった。
かつて莇美が好意を寄せていた白バイ警官を、二度とバイクの乗れない体にしてしまった男こそ布留川だったのだ。
布留川を急襲した莇美だったが、いつの間にか鬼島連合に囲まれてしまう。莇美を助けるため、六道たちはバイクを使った“鬼ごっこ”に参加することになる。
六道が危険にさらされていると聞きつけた乱奈は、木刀1本で次々と鬼島連合のバイクを潰していく。
しかし、六道が自分の身を案じて黙っていたことを知った乱奈は、道の真んなかに正座して六道の帰りを待つ。無敵の乱奈が六道を救い出さない展開がじつに熱い。
そして、六道に惚れきっているからこそ乱奈が放つ“あるひと言”がいい! 本作のメインヒロインたる彼女こそのストレートな、このひと言が、物語をギュッと引き締めてくれる。
布留川とのデスマッチ鬼ごっこのゆくえは!?……というところで続きは次巻。
続きが気になるアナタ、ちょうど良かった。第4巻がすでに発売中です!
本屋にバイクで行く時は、莇美に捕まらないよう安全な速度で!
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。構成を担当した『てんとう虫コミックスアニメ版 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』が発売中。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。