365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
5月6日は国際ノーダイエットデー。本日読むべきマンガは……。
『大島弓子選集』第13巻(『ダイエット』所収)
大島弓子 朝日ソノラマ ¥971+税
5月6日は国際ノーダイエットデー。世間からのダイエットのプレッシャーに対し、健康被害を訴える日だ。
健康であるために行うはずのダイエットが、逆の結果を招く可能性もある。
まさにその例を描いた大島弓子の『ダイエット』を紹介しよう。
標縄福子(しめなわ・ふくこ)は太めの女子高生。そんな福子を肯定的に受け入れる、天然気味で明るい親友の黒豆数子(くろまめ・かずこ)は、思いを寄せている男子・角松天(かどまつ・てん)と、福子の橋渡しによりつきあうことに。
それをきっかけに福子は過激なダイエットを始め、成功のごほうびとして、2人のデートに同行することを願う。紳士的な角松君に対して福子はある考えを持ち、ふたたびもとの体型に戻るが……。
「24年組」のなかでも繊細な線に定評がある著者らしい柔らかな雰囲気で、登場人物の名前もなんだかおめでたい。
福子が胃袋に食物を詰めこむ時の感覚を、「馬鈴薯掘り」に例えているのは文学的ですらある。
しかし福子は、過食、急激な体重減、さらにリバウンドと、典型的な摂食障害を起こしているのだ。また、母親が福子の痩せた姿を理由あって嫌悪し、義理の父は無関心など、愛情に飢えていることも提示される。
実際に摂食障害は「そのままの自分を受け入れられない」心の問題であるケースが多いという。
今流行の「毒親もの」になりそうだが、ゆがんだ家族を断罪する物語では決してない。それは、お互いに傷つくだけだ。
ちょっぴりすれ違いもありながら、数子が福子の深層心理に気づき、角松君ともに彼女の求めるものを満たす方法を考えつくストーリーは感動を誘い、読むだけでセラピーになりそうだ。
国際ノーダイエットデーは、自身も拒食症に苦しんだ経験があるというイギリスのフェミニスト、メリー・エヴァンス・ヤングが提唱した。
外食またはごろ寝の続きがちの連休後半は、なにかとスタイルが気になるかもしれないが、数子のように大らかな気持ちで過ごすのが心身の健康によさそうだ。
<文・和智永 妙>
『このマンガがすごい!』本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。