日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『月が綺麗ですね』
『月が綺麗ですね』第1巻
伊藤ハチ 一迅社 ¥680+税
(2016年4月18日発売)
旦那さまは、心優しい薬師の千里(せんり)さん。
奥さまは、天然箱入り娘のちるちゃん。
女性同士のほんわか夫婦が、初々しい新婚生活を送りつつ、心を通わせていく。
獣耳&和服、ちょっと前の日本を思わせるのどかな風景――そんな世界観と相まって、ゆっくり進む物語が心地よい。
おっとり和み系百合ファンタジーの開幕だ。
主人公・ちるは、女学校卒業とともに、婚約者である千里のもとへ嫁ぐことになった。
千里とは、幼い頃に一度会っただけ。
でも相手が素敵な人だということは、2人ともしっかり記憶に残っている。
この2人、お互いのことをほとんど知らなくて、しかも18歳と16歳。
ぎこちなくもかわいらしい、本当にのびしろしかない夫婦なのだ。
またどちらも少々浮き世離れしており、ちるは財閥のひとり娘ゆえに乳母日傘の超箱入り、一方の千里は仕事熱心でまじめすぎる朴念仁。
ちるについてきた使用人のカヨが、やきもきしつつちるの尻を叩く毎日だが、はてさてこの先どうなることか。
じつは千里には、失ったものがたくさんあるという。
この謎がどう明かされていくかも興味深い。
「月が綺麗ですね」といえば、夏目漱石が“I love you”を意訳した言葉として有名だ。
ここからつけられたわけではないのだろうが、いくぶん遠回しな、しかし風情と優しさにあふれた恋愛を描いた本作品には、ぴったりのタイトルかもしれない。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」