365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
5月16日は大相撲のテレビ中継が始まった日。本日読むべきマンガは……。
『どす恋ジゴロ』第1巻
平松伸二 集英社 ¥505+税
1953(昭和28)年の5月16日は、NHKが大相撲のテレビ中継を開始した日である。
その興業が始まったのは江戸時代から、日本古来からのスポーツであることは言わずもがなだが……それにしてもこのシンプルな競技の、人気の衰えなさはすごい。
最近は「スー女(相撲女子の略)」などと呼ばれる女性ファンの存在も話題だ。外国人力士の急増など歴史的な変化も受けいれつつ、新たな盛りあがりを見せているといえよう。
現在では取り組みをインターネットで視聴できるが、18時に太鼓の音とともに終わるNHKの生中継は、昭和の原風景を感じさせる貴重な存在だと思ってしまうのだ。
さて、リアルの相撲人気の高まりを受けてか『火ノ丸相撲』(川田)、『バチバチ』シリーズ(佐藤タカヒロ)など、相撲マンガも盛りあがっている。古くは『のたり松太郎』(ちばてつや)、『ああ播磨灘』(さだやす圭)など名作は数多あるが、ここで紹介するのは相撲マンガ史上最高のイケメン力士が主人公の『どす恋ジゴロ』だ。
この力士、その名も恋吹雪。
憂いをたたえたルックスと鍛え抜かれた肉体に、観衆はメロメロ! 塩をまく姿ひとつとっても惚れ惚れするほど美しく……土俵に上がれば華麗な技で魅了する。
とはいえ本作は、土俵の外のストーリーに重点が置かれる異色の相撲マンガだ。
じつはこの“恋関”、性の技も一級品。一夜をともにした女性にたちまち艶と不思議な運をもたらす……というわけで毎話、様々な女性との夜の取り組みが描かれるのだ。
そのジゴロっぷりにほかの力士からはあからさまに敵視されているが、恋サマはそれが相撲人気につながるのならばと達観している。
そう、この男、ただのチャラ男ではない。稽古には人一倍熱心だし、信念を持って“男芸者”を貫き、邂逅する女性たちを次々に幸せにしていくめっちゃ筋の通ったイイ男なのだ。
各話のラストを締める相撲甚句の「ア~どす恋どす恋」の調べも粋。続編『嗚呼 どす恋ジゴロ』もぜひどうぞ!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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