日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『侵略!イカ娘』
『侵略!イカ娘』第22巻
安部真弘 秋田書店 ¥419+税
(2016年5月6日発売)
侵略者だったはずのイカ娘が巻き起こすコメディも、ついに最終巻。
と言っても、特別な事件は起きていない。
『イカ娘』は連載で9年続いたが、作中の出来事はすべてひと夏のうちに起きている。たった1カ月程度しかたっていない。
毎週チャンピオンを開くたびに、イカ娘たちの過ごしている夏があった。
海水浴客であふれていた。登場人物は常に半袖や水着だった。日差しはとても、強かった。
最終回、イカ娘が海の家れもんで働くきっかけになった、修理代の支払いが全部終わる。
夏休みが終わり、海の家は店じまい。
『侵略!イカ娘』は「夏の出来事」にしておきたい、という著者の意向が見える。
このままダラダラと秋、冬と続けることもできただろう。あとがきで「オールシーズンでイカ娘の日常を描きたい」と可能性は見せてはいるものの、今回の作品ではそのにおいをいっさいただよわせなかった。
楽しかった夏を、22巻かけて真空パックし、キャラと読者の思い出としてきっちりまとめあげた。
夏を終わらせたことで、作中で起きたすべてのことが、イカ娘の宝物になった。
変わらない日常が一番の幸せなのだと、彼女は気づいた。
ほかのキャラクターたちもずらっと登場。さみしいことなんてなにひとつない。
……いや、ひとつあった。
地球外生命体対策調査をしていたシンディーだけ、アメリカに帰ってしまった。
彼女ならどこかで(例・次回作とか)しれっと戻ってきそうな気がするが、どうでしょうね?
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」