人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、くるり先生!
10万部突破の大ヒットのうえ、重版がかかり大・大・大繁盛の異色のグルメマンガ『異世界居酒屋「のぶ」 しのぶと大将の古都ごはん』。
本作にてイラストレーターとしてだけでなく漫画家としても羽化した、くるり先生にインタビュー前編では語りきれなかった想いを語っていただきました。
くるり先生の初々しさに全世界が、キュンキュンしちゃう!? インタビュー後編の、はじまり、はじまり~!
インタビュー前編はコチラ!『異世界居酒屋「のぶ」 しのぶと大将の古都ごはん』くるり先生インタビュー 読者の食欲をくすぐる飯テロの仕掛け人が直面したマンガの難しさとは?
ネタバレ注意!? カバー裏にトンデモない仕掛けとは……。
——くるり先生は原作小説の『異世界居酒屋「のぶ」』のイラストも担当されていますが、最初にこの作品に関わることとなった時、どう思われましたか?
くるり 最初は「私がイラストを描いてもいいのかな」と不安でした。『のぶ』が賞を取った第2回「なろうコン」と同じ時期に行われていた「Crafe」というイラストコンテストで賞をいただいたのですが、その時、描いていたのは天使と悪魔をモチーフにした萌え系のイラストだったので……『のぶ』の雰囲気とは全然違うものだったんです。蝉川先生が望んでいるイラストを描けるのか戸惑っていました。
——くるり先生の萌え系イラスト!? それは、すごく見てみたいです! なぜ自分が審査員じゃなかったのか、悔やんでも悔やみきれません……。ちなみに、最初からプロを目指してコンテストに応募されていたんですか?
くるり 私は美術系の大学に通っていたのですが、入学した頃からプロを目指していました。最初はゲーム系のイラストを発注している会社にポートフォリオを持っていって仕事をいただいたり、大学の関係で知りあった方に仕事をまわしてもらったりしていましたね。けれど、自分の名前がちゃんと出るような、たとえば小説の挿絵などの仕事をしたことはなかったので、出版社と仕事をしてみたいと思ったんです。
——なるほど、それでコンテストに!
くるり 友達の勧めもあって、いろいろなイラストコンテストに応募していて、そのなかの1つが「Crafe」でした。まさに私が望んでいた「受賞したら本の挿絵を描けます」という賞だったんです。ライトノベルを意識していたので、思いっきりかわいらしいイラストにしたんですが、『のぶ』の担当さんからは「おっさん」を描けと言われちゃって……。
——だいぶ方向性が違いますね……! かなり驚かれたのでは?
くるり そうでしたね(笑)。キャラクターデザインや色の塗り方も試行錯誤しましたが、結果として読者さんたちに「イラストがすごくあっている」と言っていただけて、それがすごくうれしかったですね。
——なるほど、読者のみなさんの声が、くるりさんの元気の源になっているんですね! ちなみに、くるり先生の『のぶ』シリーズで好きなキャラクターは、だれですか?
くるり 私はヒルデガルドちゃんが大好きなんです。残念ながら『古都ごはん』には、いまのところ登場していないのですが、原作小説1巻の最初のほうに登場する貴族のお嬢ちゃんです。それから、ハンスのお兄さんのフーゴが好きですよ。
——どのようなところが、気に入られているのですか?
くるり 父のもとでガラス職人として、がんばる努力家の職人タイプで、もくもくと自分の目指すものに進んでいく性格が気に入ってます。見た目は地味なんですが、ハンスと異母兄弟だということを考えて、髪の色や顔立ちは、ちょっと違うんだけど雰囲気は似ている、というようにしています。
——キャラクターのデザインを考える時はどのようにしていますか?
くるり まずは文章を読んで感じた第一印象から組み立てていきます。それから、キャラクターそれぞれにテーマカラーを当てはめています。しのぶと大将は紺で統一していて、エーファは赤で……という感じです。
——おお、わかりやすい。たしかにキャラクターごとに色がありますね。
くるり さらに、第一印象とテーマカラーをもとに、キャラクターの性格などから細かいところを考えていきます。私はアイドルが好きなので、それぞれにテーマカラーがあると覚えやすくていいな、と思っています。
——大勢いる『のぶ』のキャラクターも、くるり先生ならではの手法により特徴づけられると、わかりやすくなりますね。
くるり 蝉川先生が大勢のキャラクターそれぞれに個性を付けてくれているおかげでもあります。私自身も第一印象の時点でキャラクターを考えやすいので、ありがたいです。
——そんな愛すべき『のぶ』のキャラクターたち『古都ごはん』ではカバー下の表紙でも活躍していますね(笑)。
くるり そこの説明をするのは恥ずかしいんですが……(笑)。表紙に描いた『異世界居酒屋「のぶ」 THE BIGINNING OF THE NIGHT』というのは、私がTwitterで絵柄や塗り方についての話をしていたら蝉川先生がその話題に乗ってきたことから話がふくらんだんです。『のぶ』を全然別の雰囲気で描いたらどうだろうとか、ゴツい絵柄でいきましょうとか話していたら、なぜだか物騒な感じのイメージができあがっていました。
——いや、本当になぜですか(笑)。蝉川先生はなんとおっしゃってたんですか?
くるり 「信之はカウンターの下に拳銃を隠していそうですねHAHAHA……」みたいな感じでしたよ。
——愉快すぎる会話ですね! 混ざりたかったです。それにしても、表紙製作にそのようなドラマ(?)があったとは……。
くるり まぁ、そんなお遊びから生まれたものなんです。Twitter上で話したことが『のぶ』のネタとして広まっていて……このほかにも『のぶ』のネタとしては、なぜだかアメリカンな雰囲気の『異世界居酒屋「ボブ」』や『学園居酒屋「のぶ」』というネタも話していました。最初は、ほのぼの4コマを描く予定だったのですが、Twitterでフォロワーさんからこのネタの話を振られて……いつの間にか描くことになっていました。
——『のぶ』のことを読んでくれている人たちの声も反映されているんですね。
くるり そうですね。読者さんの声があってできた表紙マンガですね。
——では最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。
くるり 『古都ごはん』は、原作小説を読んでいる人であればメインのストーリーには出てこない居酒屋のぶの裏側を読むことができます。しのぶと大将の働いている時では見せない砕けた表情や、エーファとのぎこちないやり取りなどなど、のぞき見てほしいです。『古都ごはん』から読んだ人でも、ここでは原作小説1巻よりも前のお話も描かれていますので、最初に『古都ごはん』を読んでいただいても大丈夫です。くわえて、KADOKAWA様の「ヤングエース」ではヴァージニア二等兵先生のコミカライズが連載されています。こちらは原作準拠のストーリーなので、こちらから読んでいただいても楽しめます。料理マンガが好きな人は、原作小説もぜひ手にとっていただきたいです。こちらの文章は本当に読んでいるだけでお腹が空いてくるし、食欲が湧いてきます。現在4巻まで刊行されていますので、この居酒屋のぶというお店がどうなっていくのかを長く見守っていってほしいと思っています。
取材・構成:岡田勘一