日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『その娘、武蔵』
『その娘、武蔵』第3巻
田中相 講談社 ¥610+税
(2016年5月6日発売)
なぜバレーボールをやるのか? なぜ部活をやるのか? そんなシンプルな問いをテーマとした、廃部ギリギリ女子バレー部物語が完結した。
さきに掲げた答えは様々。いや、人それぞれであるのが本来当たり前で、それぞれに自分の理由を見つけることが大事なのだと、本作は語りかける。
「なぜやるのか」と聞かれて、「楽しいから」、「好きだから」と即答できないことに悩む子にも、ちゃんとスポットを当てている。
また、名門校の部活動でしばしば取りざたされる体罰問題を正面から扱ったところも異色である。
1年前に大仙高校で起こった体罰事件の真相――転校した者、バレーを辞めた者、大仙高校に残った者。そして、体罰が明るみに出て辞職した教師。それぞれの内心がついに明かされる。
現在はたった6人、まったくの素人部員もいるバレー部で……中学時代には全国優勝の経験もある大型スパイカー・武蔵は何を思うのか。
連載当初は、伝奇的ムードをたたえたファンタジー『千年万年りんごの子』の著者が女子バレーボールマンガを描くということにとても驚かされた。
そして今、まったく新しい土壌をひらいた田中相の意気に感服している!
『ITAN』32号(6月7日発売号)よりスタートする新連載も楽しみで仕方がない。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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