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『兎が二匹』第2巻 山うた 【日刊マンガガイド】

2016/06/01


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『兎が二匹』


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『兎が二匹』第2巻
山うた 新潮社 ¥600+税
(2016年5月9日発売)


年の差379歳の凄絶な純愛譚が完結。

本作はpixivで大きな反響を呼んだ短編がベース。この短編では不老不死の身体を持つ稲葉すずと、彼女が死ぬための手伝いを続ける青年・宇佐見咲朗(サク)の奇妙な恋人関係と残酷すぎる結末が描かれた。

「月刊コミック@バンチ」の連載版では、その短編を第1話にすえ(構図などが、かなり手直しされているので見比べてほしい)、2人の出会いからあらためて物語がつむがれていく。

心を通わせる仲になったとしても、いつかは自分より先に逝ってしまい、取り残されてしまうことを知っているすずは、骨董修復の仕事以外で他人と関わりあいになるのを避けていた。
だが、ある雨の日に道端で倒れていた少年(サク)を助けて以来、彼女の生活は一変、周囲の人間とのつながりも増えていく。

だが、楽しい毎日は彼女にとって恐怖でもある。せっかく仲よくなっても、いつかは目の前から消えてしまうことが決まっているから。
数百年間、いつだって、すずは置き去りにされてきた。そのさびしさは彼女にしかわからない。

前巻の最後にサクはすずを旅行に連れていく。目的地は、かつて彼女が暮らしていた広島だった。
この第2巻では広島が経験した70年前の忌まわしい出来事が、すずの脳裏によみがえる。
どれだけ時がたとうが夢や幻にならない、風化しない記憶がある。
すずの涙を受け止めるサク。この瞬間、2人の関係は特別なものになった。
だが、読者はみんな第1話を知っている。だから悲しい。

だが、しかし。物語は終盤、驚きの展開を迎える。
それは、すずにとって希望なのか絶望なのか――。

深くため息をつくしかできないエンディングに、呆然とさせられた。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てライター。映画『殿、利息でござる!』の劇場用プログラムに参加しております。
観てね!

単行本情報

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