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7月6日は「ピアノの日」 『ピアノの森』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/07/06


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

7月6日はピアノの日。本日読むべきマンガは……。


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『ピアノの森』第1巻
一色まこと 講談社 ¥524+税


1823(文政6 )年7月6日は、ドイツ人医師のフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが初めて日本にピアノを持ち込んだ日。
それを記念して「ピアノの日」に制定されている。

出島のオランダ商館医として長崎に派遣されたシーボルトは、鳴滝塾を開設して日本人医師たちに医学の講義を行った人物。一時帰国の際、荷物に幕府禁制の日本地図があったことから国外追放&再渡航禁止処分が下ったが(シーボルト事件)、その後、解除となった。

このシーボルト事件の直前、シーボルトは萩藩の豪商・熊谷五右衛門義比(くまや・ごえもん・よしかず)にピアノを贈った。スクエアピアノと呼ばれるタイプのもので、熊谷家には「オランダの琴」として伝わっていたそうだ。
ちなみに1823年といえば、ベートーヴェンもシューベルトもショパンも存命していた時代。この「オランダの琴」=「日本最古のピアノ」は萩市の熊谷家(熊谷美術館)に現在も保存されている。

てなわけで「きょうのマンガ」はズバリ、一色まことの『ピアノの森』だ。
1998年、今はなき「ヤングマガジンアッパーズ」でスタートした本作。2005年より「モーニング」に移籍し、ついに昨年(2015年)、足かけ18年に及ぶ連載が完結した。

主人公は森のなかに捨てられていたピアノを心のよりどころに生きてきた少年・一之瀬海(いちのせ・かい)。場末の森の端で育ち、娼婦の母を持つカイは同級生から疎まれていたが、ピアノの英才教育を受けてきた転校生の雨宮修平(あまみや・しゅうへい)と、不遇の天才ピアニスト・阿字野壮介(あじの・そうすけ)との出会いにより、ピアニストとして稀有な才能を開花させていく。

ピアノマンガといえば必ず名前があがるほどの人気作品ではあるが、ワルシャワに舞台を移し、世界最高峰のショパン国際ピアノコンクールにカイと雨宮が挑み始めて以降、最終結果が出るまでに、10年近くを費やすとは……。ここ数年は掲載が不定期ということもあり、正直、連載では振り落とされたクチだ。

だからして昨年暮れにコミックス最終巻(第26巻)が出たのを機にイッキ読みに挑戦してみたところ、驚かされた。途中でダレるどころか、見事としか言いようがない完璧な組曲ができあがっていたのだ。

森の端でくすぶった生活を送るカイが雨宮という終生の友と出会い、阿字野というかけがえのない恩師を得てピアニストとして急成長する激動のプロローグから、華やかな夜の蝶(女装ピアニスト)となり、初めての彼女(彫師の冴ちゃん)も出来て、めまぐるしい毎日を過ごす軽やかな中盤へ。
そこから各国の強豪たちとワルシャワでしのぎを削りあう怒涛のクライマックス、阿字野とカイが2人で奏でる穏やかなエピローグまで。
あまりの感動に読み終えた時は、鳥肌がおさまらなかった。

安易なお涙ちょうだいに走らず、“マンガでピアノを聴かせる”ということにパッションを捧げた一色まことの18年間に拍手喝采だ。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。今秋公開予定の内村光良監督『金メダル男』の劇場用プログラムに参加しております。

単行本情報

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