日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『黒―kuro―』
『黒―kuro―』 第3巻
ソウマトウ 集英社 ¥630+税
(2016年6月17日発売)
赤いリボンで黒髪の少女・ココ、彼女が飼っている猫のような何か・クロ。
大きな屋敷に住む彼女らを描いたこの作品も、最終巻。
ココはずっと、町の人からよそよそしい態度をとられ続けていた。
それでも楽しく物語を書きながら、クロをかわいがって幸せに暮らしていた。
いつしか、表紙を見てのどおり、ココの髪の毛の色は消滅して真っ白に。
わずかな友人たちは、クロのしわざだといって、ココから引き離そうとする。
かわいい少女の、閉じた世界での幸せな生活。一方で徘徊する真っ黒な生物は、町の人に死をふりまいている。
彼女が死の臭い漂う世界で無事だったのには、もちろんわけがある。3巻ではそのすべてが明かされる。
ココには両親がいない。その事実をずっと考えないようにしていた。
白髪になったことすら目を背けていた彼女。
もう目をそらすことはできない。クロが猫ではなく、なんなのかを認めるべき時が来たのだ。
事実を知ることは、いつも残酷だ。
町の人々は注射をうったことで、化物をはっきり見て身を守れるようになった。しかし恐怖と絶望におおわれた。
ココがクロと両親について認める時、身に迫る死の可能性から逃れることはできる。同時にクロを失い、両親についての苦痛を抱えることになる。
彼女はいろいろなものを失ったことを受け入れて、はじめて自分の姿をきちんと見つめられるようになる。
これは喪失による成長の物語だ。
現実の話はフルカラー、モノクロページは回想、というちょっと特殊な体裁で作られている。
加えて後日談も、モノクロで描かれている。
これが何を表現しているのかは、ぜひ読んで確かめてみてほしい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」