365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
7月20日は「沖縄国際海洋博覧会(EXPO'75)」が開催された日。本日読むべきマンガは……。
『藤子・F・不二雄大全集 少年SF短編』 第3巻
藤子・F・不二雄 小学館 ¥1,700+税
1975年の7月20日は「沖縄国際海洋博覧会(EXPO'75)」が開催された日。
海洋博は沖縄県の本土復帰記念事業として「海-その望ましい未来」をテーマに掲げ、日本を含む36か国と3つの国際機関が参加した国際博覧会。未来型海洋都市のモデルとなる人工島「アクアポリス」を中心に、1976年1月18日まで開催された。
そんな7月20日におススメしたいのが、藤子・F・不二雄の短編「ぼくのオキちゃん」だ。
1975年、藤子・F・不二雄は「小学四年生」誌上で『ドラとバケルともうひとつ』と題し、連載マンガ『ドラえもん』『バケルくん』に加え、月替わりのお楽しみ企画を掲載していた。『ぼくのオキちゃん』はその「もうひとつ」として発表された短編マンガで、海洋博のイルカショーに出演したイルカのオキちゃんをモデルにした作品。
物語は海洋博を訪れた少年が、ガイドブックにない不思議なパビリオン「海洋夢見館」に入りこむところから始まる。
潜水艦に乗った少年は、いつしか100年後の海へと迷いこみ、ショーで見たオキちゃんと出会う……。
海上都市アクアシティー、オキシガムをかんだ人々がくつろぐ海中公園、海底開発研究所、海底鉱山といった100年後の海の情景が魅力的に描きだされ、近未来の海のこと、環境のことについてごく自然に思いをめぐらされるつくりになっている。
主人公の少年の名前は作中では明らかにされないが、その姿は『みきおとミキオ』の主人公・みきおにそっくり。『みきおとミキオ』は偶然発見したタイムトンネルを通じて100年後の世界と行き来する物語で、前年に「小学四年生」で連載されていた。
『ドラえもん』ののび太もそうだが、近未来との接点を作ることで、読者にすんなりと前向きに将来のことを想像させる物語のつくりになっている。
藤子・F・不二雄は1975年当時、相方の藤子不二雄A、石ノ森章太郎、つのだじろうらと海洋博へと足を運んでいる。
おそらく現地で実際にオキちゃんのショーを楽しみ、着想を得たのだろう。
海洋博を終えた後、オキちゃんはどうなったのか?
じつはオキちゃんという名前は個別のイルカに付けられたものではなく、海洋博のために捕獲・選抜された15匹のイルカチームを指す名称だった。
イルカの寿命は約50~60年。海洋博を記念して設営された海洋博公園内にある「オキちゃん劇場」で、オキちゃんたちは今も現役でショーを見せているのだ。
この夏は『ぼくのオキちゃん』をたずさえて、海洋博公園にオキちゃんに会いにいこう!
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。