日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『休日ジャンクション 真造圭伍短編集』

『休日ジャンクション 真造圭伍短編集』
真造圭伍 小学館 ￥552+税
（2016年7月7日発売）

日常的な情景はドラマティックに、非日常的な事件はごくごく身近に感じられる。

淡々と綴られている印象だが、読み返すと登場人物たちの感情はとても彩り豊かに表現されている。読み手を選ばないキャッチーさと、肩の力の抜けた嫌味のない洗練が同居した作家である。
『森山中教習所』実写映画化（現在公開中）で注目を浴びる真造圭伍の最新短編集。

7編の主人公は年齢層も環境もじつに様々だ。
巨乳の彼女もいて、けっしてロリコンではない男性がひょんなことから美少女小学生と“デート”することになり、かつてない感情にとらわれていく『美少女なんて大嫌い』。

『休日』は、3カ月ぶりに会う程度の距離感の――おそらく学生時代からの腐れ縁であろう男2人を描く。かたや普通の勤め人、かたやプロを目指すでもなくマンガを描いているという……要はニート。友情を確かめあうような会話はいっさいないのだが、2人のゆるゆるとしたやりとりが心の琴線に触れる。

せつなさナンバーワンは猫視点で展開する『家猫ぶんちゃんの一年』!!
『森山中教習所』のスピンオフ作品『つりぼり松田さん』も収録。

目立たないシーンにも“名状しがたい感動”が潜む、何度も読み返したくなる短編集だ。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」