『新月を左に旋回』
衿沢世衣子 秋田書店 \680+税
(2014年7月16日発売)
主人公は、中学生のユウコ。ある日突然、お姉ちゃんが家を出てゆき、かわりに「このはずくさま」と呼ばれる、おかしな子供が現れる。
コノハズクとは、「ブッポーソー」と聞こえる鳴き声から、「声の仏法僧(三宝の宝物)」と呼ばれる鳥のこと。このはずくさまの言動は、とても愛らしいのだけれど、じつは異世界の存在で……。
このはずくさまとの同居生活を軸に、ユウコと問題山積みの同級生たちとのスクールライフがつづられる、爽やかな連作集。
あくまでもさりげない日常をベースにしながら不思議な事件が起こってゆく、「日常系ファンタジー」となっている。
ユウコの通う中学は女子校なのか、クラスにいるのは女の子ばかり。
同著者の『シンプルノットローファー』で描かれた女子高生たちもそうなのだけれど、だれもがそれぞれ思うがままに在りながら、ゆるやかに共存している様子が、とても心地よい。
着飾らず、どこかぬけのある登場人物たちが可愛らしくて、いつのまにか不思議な世界に入り込んでしまう。
壮大なファンタジーの予感を匂わせつつも、1冊でさくっと終了。
独特の軽やかさも、魅力です。
<文・かとうちあき>
人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』の編集長(仮)。野宿が好きです。だらだらしながらマンガを読むのも好きです。