『もしも神様』
ひうらさとる 集英社 \453
(2014年6月25日発売)
ヒロインは見るからにデキる、都会のキャリアウーマン・杏子。彼女はフリーランスで、小説家やアーティストのマネージメントをしている。
しかし、フラワーショップで働く年下男子・藤緒にプロポーズされ、幸福な家庭を手に入れたのも束の間。結婚2年後に、夫は突然に事故死してしまった。
ところが、泣き叫ぶ杏子の目の前で、死んだはずの藤緒が生き返ったのである……!
藤緒が死んでいたのはあきらかで、その証拠に、よみがえった藤緒の心臓は動いていない……つまりは、ゾンビなのだ。
見た目は普通の人間と変わりないものの、人間と同じというわけにはいかない。
この奇跡によって相手を思う気持ちはますます強くなったものの、生者と死者、少しずつ行き違いが生じていく。
かけがえのない相手の幸せのために、できることは何なのか。そして、自分の幸せとはいったい何なのか。
この問いの答えを2人が見つけたとき、ひとつの結末が訪れる。
愛は美しくやさしいけれど、ときには人を縛るし傷つけもする。なかなかやっかいなしろものだ。その不可解さから逃げ出さないで、お互いの愛をわかり合えたらいい。
藤緒が生き返ったのは、そのために――神様がくれたおまけの時間だったのかもしれない。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」