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『ウルトラマンタロウ 完全復刻版』 石川賢とダイナミックプロ 【日刊マンガガイド】

2016/08/08


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ウルトラマンタロウ 完全復刻版』


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『ウルトラマンタロウ 完全復刻版』
石川賢とダイナミックプロ 小学館 ¥2,200+税
(2016年6月23日発売)


『ウルトラマンタロウ』のコミカライズとひと口にいっても、森義一、石川賢、内山まもる、みやぞえ郁雄、斉藤ゆずる、森藤よしひろ、田中宏明といった面々が手がけているのだが、とりわけ“オフィシャル感”の強い作家といえば、テレビ本編において劇中イラストを描いていた内山まもるをおいて他にないだろう。
しかし、ファンの間でもっとも話題に上がる作品となると、「週刊少年サンデー」に連載されていたこの石川賢版『タロウ』に軍配が上がる気がする。

宇宙の戦士、未来の生物、人間精神の産物とされる〈奇形獣〉とウルトラマンタロウの、文字どおり血で血を洗う壮絶なバトル!
石川賢といえば、自らも原作者に名を連ねている『ゲッターロボ』における壮絶なアレコレが有名だが、原作の所在など関係なく、彼の手にかかればすべて石川ワールドに引きずりこまれてしまうのだ。

ズバッ バリボリバリ ズルリ ボタボタジュワーーーッ ビシャー ドワッ

今回の完全復刻版コミックスの帯にある、「史上最怖」の文字は伊達ではない。
かつて怪奇コミックの巨匠である楳図かずおは『ウルトラマン』のコミカライズを通して内面的な恐怖=テラーを描いたが、石川版『タロウ』で展開される恐怖は、もっと肉体的なもの……すなわちホラーなのだ。

現代の『アラビアンナイト』を目指して企画された『タロウ』は、人間が怪獣にしがみつき、いっしょに空を飛んでしまったりする奇想天外な作風だった。
ウルトラの母やウルトラ兄弟、ウルトラの国が幾度となく登場するにぎやかな番組というイメージを抱いている方も多いに違いない。
だが、実際のところは人死にのシーンも多く、意外なほどにおどろおどろしい雰囲気を漂わせているのだ。
一見すると意外な取りあわせかも知れないが、『本当は恐ろしいグリム童話』ならぬ“本当は恐ろしい『ウルトラマンタロウ』”と石川のバイオレンス趣味は相性抜群なのである。

もちろん、初単行本化となる「小学1年生」版も見逃せない。
こちらは「サンデー」版とは打って変わって、テレビ本編に忠実な世界観となっており、防衛チームのZATや頼りになるウルトラ兄弟と力を合わせて凶悪怪獣に立ちむかうというストーリーなのだが、その戦いざまはダイナミックそのもの。
バルタン星人の首が飛び、ジャミラがウルトラの父に喰らいつき、ゾフィーは土手っ腹をぶち抜かれ、セブンも木っ端微塵に吹きとばされる。
むしろおなじみのキャラクターだからこそ、その過剰なまでの暴力性が浮き彫りになっているといえるかもしれない。
また、志半ばで命を落としたエースのブレスレットを使い、見事その仇を取ってみせるタロウといった燃えるシチュエーションも頻発。まぁ、そもそもエースはブレスレットなんて持ってないんですけども。そんなアバウトな感覚も、じつにダイナミック! なのよねー。
小学生相手にも容赦のない、ケン・イシカワ節を堪能できることうけあいの一作だ。



<文・ガイガン山崎>
“暴力系エンタメ”専門ライター。石川賢の細菌ネタをこよなく愛する。好きなタロウ怪獣はコスモリキッド。

単行本情報

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