日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ハイスコアガール』
『ハイスコアガール』 第6巻
押切蓮介 スクウェア・エニックス ¥571+税
(2016年7月25日発売)
ハルオは、本当に立派に育った。本当にのびのびと「いい男」に育った……と感じさせられる6巻。「いい子」ではないのがミソ。
この巻では、ハルオのことが好きな小春と、小学生からのゲームライバル大野との三角関係がかなり強調されている。
母親も含め周囲の人間もさすがに、大野とハルオの特別な関係を感じ取り始めており、応援すらしはじめている。お膳立てはばっちり。
だが大野には最大の壁がある。
自分はお嬢様で、どんなにゲームが好きでも遊ぶことができない。自由がない籠の鳥だ。
そんな大野に、ハルオが1カ月かけて「RPGツクール」で、彼女のためだけのゲームを作るシーンときたら!
ゲーム内に施したギミックは、2人だけにしか通じない文通。
彼の間接的なメッセージは、情緒にあふれている。
第6巻は今までの格ゲー・アクション中心だったのに対して、「ときメモ」のような恋愛ゲームなど、普段ハルオがやらないゲームがプレイされている。
このマンガは常に、「ゲーム」から人生の大事なことを学び、育てられてきた。
今回はさらにゲームの幅を広げたことで、人間の幅が確実に広がっている。
それが如実に大野の心を支えていくのだから、ハルオのお母さん同様はげましたくなるってもの。
一方もうひとりのヒロイン小春とは、交際をかけての格ゲー3本勝負が行われる。
第5巻ラストで恋の決戦が始まってから、長いこと単行本がストップしていたので、寸止めを食らっていた人も多いはず。
彼女には、ハルオや大野と決定的に違う部分がある。
恋愛と勝負にこだわりすぎるがゆえに、ゲームを楽しめなくなっていた点だ。
この巻でそれを初めて乗り越え、ゲーム愛が彼女に強く芽生えた。
物語全体には大野寄りだが、小春がようやく「ハイスコアガール」の名の少女としてのスタートラインに立ったことが描かれる大事な巻だ。
大野とハルオ、小春とハルオの関係は、恋愛関係とはいいがたい。
けれど特に大野を見ていると、そんな「恋愛」という言葉に縛られることすら、もったいないように思えてくる。
2人の関係は「自由」を手にし始めた、もっと特別ななにかだ。
あ、ぼくは小春派です。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」