日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ランド』
『ランド』 第3巻
山下和美 講談社 ¥800+税
(2016年7月22日発売)
獣の皮をかぶった役人たちが取り仕切る「この世」と呼ばれる村で、四方に鎮座する神々に見守られて暮らす人々。
村人を縛る「50歳を迎えると人は必ず死を迎える」というしきたり。
「あの世」と呼ばれる山の向こう。
双子の姉を生け贄に捧げられた少女・杏(あん)。
不思議な山の民……。
パッと見には、因習に囚われた山村を舞台にした民俗学的な物語かと思いきや、読み進めるうちに、どうやらこれは普通の構造の物語ではないぞ、と気づかされる。
「この世」とは、「あの世」とは何なのか? 第1巻・第2巻では、世界の仕組みについては説明のないまま、それぞれの物語が交錯する謎めいたストーリーテリングが展開されていたのだが、第3巻では「あの世」の具体像が描かれ、和音の役回りも含め、まだまだ謎だらけながらも、この物語が「ランド」なる大きな世界観にもとづいたものであることが暗示される。
ここで、物語第一話の冒頭に記されていた「果たしてこの世が本当に存るのかということさえも証明されてはいない」というプロローグがにわかに意味を帯びてくる。
これは想像以上にとんでもない物語となりそうな予感大。
この世とあの世を支配する「ランド」とは何なのか? その「ルール」とは?
この作品が描こうとしているものは、はたして何なのか?
焦らされすぎてイライラしてきた人も、きたるべき全体像の開示にそなえて、巧みに散りばめられた伏線をじっくりと読み解いて。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69