365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月23日はコペンハーゲンで人魚姫の像が初公開された日。本日読むべきマンガは……。
『高橋留美子人魚シリーズ1 人魚の森』
高橋留美子 小学館 ¥524+税
デンマークのコペンハーゲンにある人魚姫の像は1913年8月23日に初お披露目となった。大岩に座し遠くを見つめるそのブロンズ像は同国の観光名所のひとつ。
この像のモチーフとなった、1836年に発表されたアンデルセンの童話「人魚姫」は人間の王子に恋した人魚の悲しい結末を描いている。
日本でも子供に聞かせる童話のひとつとしてなじみ深く、童話における人魚姫はどこかロマンティックな響きだ。
一方、日本における人魚といえば祟りや生前の悪行と結びつけられるものがほとんどで、吉兆として扱われたケースもあれど、基本的にはおどろおどろしい存在だったようだ。
高橋留美子の人魚シリーズ『人魚の森』、『人魚の傷』、『夜叉の瞳』は人魚と不老不死を巡る奇譚。
人魚の肉を食べ不老不死となり500年も生き続けてきた湧太は“普通に死ぬ”ために人間に戻る方法を探していた。その最中、人里離れた集落で育てられた少女・真魚(まな)と出会う。
老いず、死なず、永遠を手にすることへの憧れ。思いがけずそうなってしまった者の悲哀と、希望を描いた人魚シリーズは高橋留美子作品の魅力である軽妙なトーンからは大きく離れている。ストレートにいうなら、血なまぐさい作品だ。
しかしこの作品において、その血なまぐささは人間くささでもある。
不老不死という、超越した存在をとおして読者は“人間くささ”を目撃するのだ。
<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
ブログ「自分です。」