365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月28日はニホンカワウソが絶滅種に指定された日。本日読むべきマンガは……。
『3.11を忘れないために ヒーローズ・カムバック』
(「伝染るんです。外伝 サラマンダー」所収)
細野不二彦、ゆうきまさみ、吉田戦車、島本和彦、石ノ森章太郎、藤田和日郎、
高橋留美子、荒川弘、椎名高志、かわぐちかいじ 小学館 ¥905+税
2012年8月28日をもって、日本固有種とされるニホンカワウソが環境省により絶滅種に指定された。それまでは絶滅危惧種だったが、1979年以来明確な目撃例がなかったためだという。
昭和初期には日本各地で当たり前のように見られた動物だが、良質な毛皮を求めた乱獲や、巣づくりに適した環境が破壊されていったことで短期間に個体数が激減したそうだ。
とはいえ、マンガ好き、とりわけギャグマンガ好きならば、ニホンカワウソはごく身近な動物であり続けたはずだ。
そう、不条理4コマの金字塔である、吉田戦車の『伝染るんです。』を代表するキャラ「かわうそ君」がいた。
着ぐるみのようないでたちで直立歩行し、丸顔でまゆ毛の太い、インパクトのありすぎる風体をしたアイツのことだ。ただし、本物とは似ても似つかないのだが。
そんな彼自身もこの日の「ニホンカワウソ絶滅」の報道により、アイデンティティが揺らいだようだ。
『ヒーローズ・カムバック』所収の「伝染るんです。外伝 サラマンダー」ではそんな時事ネタ、およびセルフツッコミともいえるエピソードが描かれる。サブタイトルの「サラマンダー」の由来は、読んでのお楽しみだ。
様々な作品への出演を経て『伝染るんです。』の頃よりもやや外向的な性格になっているかわうそ君だけでなく、かっぱ君、かえる、しいたけなど、おなじみのキャラたちも登場し、やっぱりナンセンス! と妙な安心感がある。
『ヒーローズ・カムバック』は東日本大震災に寄せて描かれたアンソロジーだ。
作者は岩手県出身で、エッセイ『まんが親』などでは、被災地ボランティアを体験し、心を痛めたことが綴られている。
ちょっぴりクールなオチも含め、ギャグではすまない不条理な事態が降りかかっても、日常を取り戻せますように……との繊細な願いがこめられているのではないか。
なお、今も四国を中心に目撃情報も散見されており、ニホンカワウソ生存の可能性も充分ありうる、との希望もここに記しておきたい。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。