日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『街角散歩道』
『街角散歩道』
大谷博子 秋田書店 ¥552+税
(2016年8月16日発売)
思えば、マンガにかぎらずドラマなどの世界でもファミリードラマって減ったような気がする。
少女マンガの領域でいうと、いくつになっても恋愛ドラマは楽しくて……アラサー、アラフォーだって意外や中高生の初恋モノにのめりこめるものだが、ときには素敵な“地に足のついた女性”の物語を読みたくなる。
『街角散歩道』は、『翔子の事件簿シリーズ』で知られる大谷博子の、もうひとつの(現在進行形の)シリーズ作。連作短編のかたちをとっているので、本作から読んでもOK!
主人公は、札幌のとある街角でフラワーショップを営む桔梗さんという女性だ。
蕎麦屋の2代目である夫の蓮、2人の子どもたちとの毎日は笑いの絶えない幸せな日々。
義父、実父、兄夫婦や双子の姪たちともあたたかい交情を結びあう桔梗だが、周囲には困った事情を抱えた人が現れて……。
“見ず知らずの他人”に、迷わず手を差しのべる。そんなドラマを絵空事だからとかたづけたくはない。
桔梗や、その家族たちは幸せな家庭生活を送っているがゆえに、“気持ちの余裕”を分けあたえることを惜しまない。損をすることを恐れない、サッパリとした態度は気持ちがよく、“偽善”なんて言葉を思いつくほうが下品じゃないかと感じるのだ。
袖振りあうも多生の縁。そんなことわざを思い出させられる作品である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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