日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『四月馬鹿』
『四月馬鹿』
川辺蛙子 双葉社 ¥815+税
(2016年8月27日発売)
とある中学に転校してきた雨ヶ瀬は、なかなかの問題児だ。
クラスメートが話しかけてもひたすら無視、授業はサボりがち。目つきも態度も悪いため先輩から絡まれるが、ケンカはめちゃくちゃ強くて……とにかくワルの仲間さえも必要としない、徹底した一匹狼なのだ。
先生さえも関わろうとしなくなる雨ヶ瀬に、唯一話しかけ続けるのが隣の席の桜田花だ。
女子にしてはややガサツだが明るく気のいい花は、友だちが多い人気者。いつもひとりでいる雨ヶ瀬を放っておけず、無視されても屈託なく声をかけ続ける。
初めのうちはうっとうしく思っていた雨ヶ瀬も、いつのまにか花のペースに巻きこまれるようになっていき――。
なんだかんだで同じ高校に進学した2人。雨ヶ瀬はあいかわらず眉間にシワを寄せてばかりで言葉数は少ないけれど、その心のなかは刻々と変化していた。
花のほうはというと、まったく異性を意識していないようだが……。
「ブス」「デコ助」とののしりあう姿もほほえましい。
そんなふうにやりあえるのも仲のよい証拠だけど、この先どうなっていくんだろう?
花の目に映る雨ヶ瀬、雨ヶ瀬が横目で盗み見る花……2人の微妙な表情から、10代の甘酸っぱい感情をじっくり読みとってほしい。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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