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『水木しげる漫画大全集 補巻1 媒体別妖怪画報集』 第1巻 水木しげる 【日刊マンガガイド】

2016/10/07


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『水木しげる漫画大全集 補巻1 媒体別妖怪画報集』


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『水木しげる漫画大全集 補巻1 媒体別妖怪画報集』 第1巻
水木しげる 講談社 ¥4,500+税
(2016年9月2日発売)


2013年6月にスタートし、現在までに第2期68巻までが刊行されている『水木しげる漫画大全集』。
水木先生の全作品を発表年月と掲載誌を軸として全103巻にまとめようという壮大なプロジェクトの「補巻」となる本作は、水木先生の「妖怪画報」(連載作品に連動した妖怪画のグラビア特集)だけを収録したもの。

予約購入には含まれない別冊扱いで、版型は大全集と同じA5版だが。
ページ数はじつに500ページ超の大ボリュームとなる。

水木先生が初めて手がけた記念すべき妖怪画集、『週刊少年マガジン増刊 水木しげる日本妖怪大全』全150ページ余がまるまる収録されているほか、大泉実成との共著『水木しげるの大冒険』シリーズの妖怪画報も500ページ超えでみっちり収録。
掲載当時のカラーを完全再現、後年の妖怪名や形態の変遷をくわしく解説した「妖怪更新情報」付き……と、これぞ全集の鑑! な編集が冴えわたる。

これ1冊で代表的な水木妖怪画が網羅できるうえに、「週刊少女フレンド」、「少年マガジン」、「ガロ」、「ヤングジャンプ」など、様々な雑誌で連載されていた妖怪画報も一挙収録。

なかでも「なかよし」掲載の『これはびっくり!へんなおばけちゃん!』は、ファンでも実際に読んだことがある人は少ないレア作品なうえに、時期的にも『墓場の鬼太郎』の連載が始まった当初とかなり初期で、後年と比べると趣が異なり、同じような妖怪でも呼び名が違っていたりするのが楽しい。
「でも、ほんとうにいたのかといわれても、わたしには、こまるのです。わたしは、むかし生きていなかったから……。」
なんて冒頭文も、少女向けながら水木先生節炸裂!

日本はおろか、世界各地の文化や信仰を色濃く感じさせるユニークな妖怪たち(民間信仰の神仏や精霊を含む)の世界。そこから浮かび上がるのは、人々の心の奥深くに潜む、欲望や憧れや恐れや畏敬の念であり、目に見えないものを感じる、精神的な豊かさでもある。

妖怪ブームといわれる昨今だが、今後何百年ものちまで遺ってゆく魅力と生命力を宿した妖怪は、やはり水木しげる画をおいてほかにない!

水木先生による解説文も読みごたえあり。妖怪本の基本であり至宝となりうる1冊だ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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