日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『とんかつDJアゲ太郎』
『とんかつDJアゲ太郎』 第8巻
小山ゆうじろう(著) イーピャオ(案) 集英社 ¥580+税
(2016年10月4日発売)
今年のプロ野球では、北海道日本ハムファイターズ・大谷翔平の投手と打者の「二刀流」が話題をよんだが、本作の主人公・勝又揚太郎も立派な「二刀流」なのである。
渋谷のとんかつ屋「しぶかつ」の3代目・勝又揚太郎は、出前を届けたクラブで高揚感を覚える。そこで「とんかつもフロアもアゲられるDJになりたい!」と、一念発起した揚太郎は、とんかつの修行に身を入れる一方で、DJデビューを果たす。
とんかつ屋とDJの「二刀流」をこなす「とんかつDJアゲ太郎」の誕生だ。
第8巻では、関西遠征を終えたアゲ太郎は、ホームの渋谷でChill outという雰囲気で、脇を固めるキャラクターたちのエピソードが中心になる。
服飾専門学校生となった妹・ころもが、DJとしてのアゲ太郎を知って、兄を見なおす回があり、女嫌いのレコード店主・溝黒五郎の過去の恋愛が語られ、池袋のDJ IKENOSUKEとメンバーたちとの友情物語があり、アゲ太郎を兄さん(ヒョンニム)と慕うイケメンDJイー・ドンミョンとの別れあり、とバラエティに富んだエピソードが紹介される。
そして、アゲ太郎にもひとつの転機が訪れる。
父・揚作は、店で修行しながらDJを続けるアゲ太郎に、
「とんかつは遊び半分でやれるほど甘くはない!!
半端な信念ではいつまでたっても店は任せられんぞ」
とキツいひと言を浴びせる。
しかし、アゲ太郎は「とんかつもDJも同じなんだよ!!」と反論し、一歩も退かない(簡単にヘコまないところに、アゲ太郎の成長ぶりが出てきている)。
そこで揚作は、アゲ太郎が出演するイベントに、初めて足を運ぶのだが……その結果がどうなったかは、本書でご確認ください。
さらに、次巻では怒涛の展開がやってくる。
なんて、思わせぶりに書いているが、じつは『とんかつDJアゲ太郎』はウェブコミックの「少年ジャンプ+」に連載中なので、第8巻の続きはすぐに読めちゃうのだ。
大谷翔平の「二刀流」は、今年見事に開花した。一方、アゲ太郎は、「二刀流」を貫きとおせるのか?
気になる方は「少年ジャンプ+」へGO!
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。、「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)でミステリコミックの年間レビューを担当。