365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
10月27日は、サターンIが打ち上げられた日。本日読むべきマンガは……。
『MOONLIGHT MILE』第1巻
太田垣康男 小学館 ¥505+税
「地上で、この放送を聞いている人、いますか? わたくしは人類初の、宇宙飛行士です。たった今、人間は初めて、星の世界へと足を踏み入れました。海や山がそうであったように、かつて神の領域だったこの空間も、これからは人間の活動の舞台としていつでも来れる、くだらない場所と、なるでしょう……」
落ちこぼれの男が一念発起して宇宙を目指す、ガイナックスの青春宇宙開発映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』のなかで、見事宇宙へと上がった主人公・シロツグは、そこでこんなふうに呼びかける。
本日、1961年10月27日は、人間を月へと送り出さんとするアポロ計画のかなめ……サターンロケットの初号機、サターンIが打ち上げられた日である。
本機によって月への道は開かれ、そしてその発展型にして人類史上最大のロケット・サターンVでもって、人類はついに月に「小さな」そして「偉大な」一歩を刻むことになった。
しかしながら残念なことに72年のミッションを最後に、月面有人飛行は行われておらず……宇宙や月が、シロツグが言ったような「いつでも来れる、くだらない場所」になるのはまだまだ先の話になりそうだ。けれども、もし、そんな日が来たとしたら……?
そんな「普通の場所」になってしまった宇宙と月を描いたのが、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』などでも知られる太田垣康男の『MOONLIGHT MILE』だ。
一度、そうなってしまえば、宇宙が求めるのは、「最先端の科学技術者」や「国家の英雄」や「冒険家」ではない。限りない気力と体力と根性を持って、汗水垂らして過酷な労働に耐えるブルーカラーたちだ。
そんな宇宙の肉体労働者、猿渡吾郎のMOONLIGHT MILE……月への未知を描く。
もはや宇宙が、「遙か彼方の人類のロマン」ではなく、土木建築の現場であり、そしてまた国際紛争の火種にもなるという「地上と同じ、ごく普通の場所」になってしまった時代。
そんな、いつかはやってきてしまうはずの未来を描いた作品を、今日という日に読んでいただきたい。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas