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10月28日は「ドーハの悲劇」があった日 『Jドリーム飛翔編』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/10/28


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

10月28日はドーハの悲劇があった日。本日読むべきマンガは……。


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『Jドリーム飛翔編』 第10巻
塀内夏子 講談社 ¥390+税


サッカーWカップアジア最終予選が佳境を迎えている。日本は1998年のフランスから2014年のブラジルまで5大会連続出場。2018年のロシア大会に駒を進めることができれば、6大会連続出場となる。
日本のサッカーファンにとって、もはや本選に出場することは前提であり、グループリーグ突破に注目が集まるのが常となっている。

だが、しかし。
30代以上の方なら、あの日のできごとを忘れていないはずだ。1993年10月28日、カタールで行われた日本vsイラクのことを。
翌年のアメリカWカップ・アジア地区最終予選・最終節となったこの試合、日本は勝ち点5でサウジアラビアと並んでいたが、得失点差でトップに立っていた。

3位には勝ち点4で韓国がつけていたが、日本は勝てば無条件で初めての本選出場が決定。引き分けの場合はサウジアラビア(vsイラン)と韓国(vs北朝鮮)の結果次第となるが、仮に両国が勝利したとしても、3位の韓国は2点差勝利が条件。日本は非常に有利な立場で最終戦に臨んでいたのである。

試合は三浦カズ(三浦知良)が早々にヘディングを決めて先制、後半に同点に追いつかれるも、ゴン中山(中山雅史)のゴールで勝ち越し、そのまま90分が経過した。
この時点でサウジアラビアが勝利し、韓国が3点差で勝利したことが選手に伝わっており、引き分けは許されない状況となっていたが、アディショナル・タイムさえ乗りきればアメリカ行きのチケットをゲットすることができた。

テレビを見ていた日本国民は、固唾を飲んで歴史的瞬間を見守っていたのだが……。
カウンター攻撃からコーナーキックを得たイラクは、ショートからヘディングでゴール。その直後に無情のホイッスルが鳴り響いた。ドーハのアルアリ・スタジアムで行われたことから、後にこの試合は「ドーハの悲劇」と呼ばれ、語り継がれることになる。

話を少し巻き戻そう。
ドーハの悲劇が起こった1993年はJリーグの発足元年でもある。それにあわせて「週刊少年マガジン」で始まったのが塀内夏子の『Jドリーム』だ。Jリーグのチームが実名で登場し、個性的な選手たちが日本代表としてWカップに挑むリアルなストーリーで人気を博した。

1999年まで足かけ6年の長寿シリーズとなったが、本日紹介したいのは第2部・飛翔編の第10巻(通番はついているが、番外編の作品集)の巻末に収録されている「松永成立物語」だ。

松永はドーハの悲劇で日本のゴールを守っていた選手。横浜マリノスに所属するゴールキーパーで、経験豊富な31歳のベテランだ(すべて当時)。
小学生時代は野球少年だったが、進学した中学に野球部がなく、しぶしぶサッカー部へ。
野球をやっていたならキャッチングやスローインが得意だろうという理由でゴールキーパーとなった松永は、心優しいOBや、恩師・加茂周との出会いをへてめきめきと実力をつけ、日本代表まで上りつめる。

終盤ではアメリカ大会へ向けた予選の激闘が、ゴールキーパー目線で語られる。
Wカップ予選で初めて韓国を破った試合では、得点をあげたカズではなく、松永がMVPに選ばれるなど、その活躍は目ざましいものがあった。

しかし最後の最後、「このコーナーさえしのげばアメリカに……」と思った瞬間、時間が止まったかのようにボールがゴールに吸いこまれてしまう。

試合後は「なぜ跳びつかなかったのだ」と松永に批判が集まった。
しかし、あの1プレーだけを責めるのは、いくらなんでも酷というほかない。

あらためてあの瞬間を動画で見直してみると、松永を戦犯にするのはお門違いだということがよくわかる。
勝ち越しのまま90分が過ぎた時点で、どんなことをしてでも1点を守りぬくことが先決。しかし不用意に攻めあがった日本は、パスミスからカウンターを許してしまう。最後はセットプレーからの得点だったが、それも松永が相手のシュートをはじいたファインセーブの結果だったのだ。

アディショナル・タイムに突入し、日本がボールを持った時点で、いくらでも時間の使い方はあったはず。
もちろん、そんな文句は後出しジャンケンでしかないし、その結果が4年後の「ジョホールバルの歓喜」につながったことはたしかだろう。
しかし、そのジョホールバルに35歳となった松永の姿はなかった。

あれから23年、サッカーを取り巻く環境が激変したのは前述したとおりだ。
松永は横浜FマリノスのGKコーチとして、今もサッカー界を支えている。

2016年10月時点でのA代表の主なゴールキーパーは川島永嗣が33歳、西川周作が30歳、東口順昭が30歳といずれもベテランだ。
23年前の松永のように、日本代表を背中から鼓舞し、勇敢なプレーでゴールを死守し、ロシアへの道を切り開いてほしい。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。公開中の『金メダル男』(内村光良監督)の劇場用プログラムに参加しております。

単行本情報

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