『サッカーの憂鬱 裏方イレブン』第1巻
能田達規 実業之日本社 \619+税
日本プロサッカーリーグである“Jリーグ”。公益社団法人・日本プロサッカーリーグは、その発足を記念して、2つの記念日を設けている。
ひとつは、1992年、Jリーグ初の公式戦・ナビスコカップ決勝が開催されたことを記念して1993年に制定された、11月23日の“Jリーグの日”。もうひとつが、1993年、Jリーグ開幕初戦となるヴェルディ川崎と横浜マリノスの試合が行われた記念して設けられた、5月15日の“Jリーグの日”だ。
こちらの記念日は、2013年にJリーグが開幕20周年を迎え、原点となる日を残したいということから同年に制定されたもの。
ちなみにこのヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ1969)と横浜マリノス(現・横浜F・マリノス)の初戦は、ヴェルディのオランダ人FW、ヘニー・マイヤーがJリーグ第1号ゴールを決めたものの、試合は2対1でマリノスが勝利。
しかしこの年、2ndステージを制したヴェルディは1stステージの覇者・鹿島アントラーズをJリーグチャンピオンシップで破り、初代Jリーグ年間王者に輝いている。
その勝利の裏にあるのは、言うまでもなく選手たちの活躍だ。ただ、選手たちもサポートをしてくれる裏方がいなければ、力を発揮することはできない。
影でサッカーを支える、そんな裏方の仕事と努力にスポットを当てた作品がある。Jリーググッズのイラストなども手掛ける、『おまかせ!ピース電器店』の能田達規が描く『サッカーの憂鬱 裏方イレブン』だ。
取りあげられているのは、審判に始まって、広報、ホペイロ(用具係)、実況アナウンサー、第3ゴールキーパーなど。
試合にはもちろん、得点にも直接絡まなくても、それぞれが情熱とプロ意識を持ってサッカーにたずさわっている姿が、熱く胸を打つ連作だ。
サッカーファンはもちろん、そうでない人もバックヤードを通して描かれるサッカーに興味持つこと間違いなし。
Jリーグの日にあえて裏方をのぞくことで、サッカーとスタッフ、その姿をドラマティックに描く新たな視点のスポーツマンガの魅力に打たれてほしい。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。