日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ゾンビが出たので学校休み。』
『ゾンビが出たので学校休み。』 第3巻
むうりあん 竹書房 ¥820+税
(2016年11月7日発売)
ゾンビパニックマンガとしては、かなり異色な作品。
ゾンビをモンスター扱いせず、「元人間であるゾンビを差別してもよいのか?」という問いが、物語の軸に組みこまれている。
201X年に地球を覆ったオーロラにより、世界中にゾンビが爆増。
人口密集地から人々を疎開させることで、ゾンビの隔離に成功。
東京都はゾンビに占領される状態になった。
だが長野から修学旅行にきていた少女たちは、秋葉原の町に閉じこめられてしまった。
立てこもり生活をする少女たちは、基本戦わない。
かみつかないわけじゃない。しかしゾンビは、人を襲うよりも、日々の生活を繰り返すほうが優先順位が高いらしい。
店員なら(理解できているかはともかく)レジに立ってものを販売し続けている。
元オタクたちは、同人ショップでマンガを読んでいる。
アイドルファンだった者は、今もアイドルを追いかけ続け、応援している。
「あの人たち人間を襲う以外ほとんど人間と変わらないんだもん…襲わない人もいるし」
「人間をかじるのだって食べたいからじゃないかも…」
目の前にいるのは、人なのだ。
「人間は食べ物ばかりに餓えてるわけじゃない」というセリフが刺さる。
趣味の町・秋葉原でのゾンビの行動は、ちょっと滑稽だ。
しかし生前、自分にとって何よりも大切だったものを求めてあがいているのがわかってくると、なんとも複雑な気分になる。
彼らは、幸せに餓えているだけだ。
最終巻の第3巻では、少女のひとりがゾンビにかまれてしまう。
だが助けは来ない。自分たちで外に行かなければいけない。
ゾンビを隔離した人間の世界は、あまりに遠い。
「みんな…『掃いて捨てる』しかないって思ってるのかな…
ここからゾンビさんを助ける方法はないのかな…」
「外の世界とここは違うんだぞ ここのゾンビはドルオタにアニオタ…
ゾンビじゃなくても生き辛い奴らばっかじゃん」
「理解できないものを隔離すれば安全なんて そんなのおかしいよ!!」
基本明るく楽しい4コマギャグだ。しかし物語は次第に「差別」問題にシフト。
ゾンビ側は、譲歩しなければいけない。
人間側は彼らが友好的であるのなら、元人間であることを理解してもいいはずだ。
この2つを見事にラストで昇華した。
オタクのあり方、ひいては人種差別にまで踏みこんだハードな作品。
ヒロインのひとりは、ゾンビたちが集まるビルに、こう書き残した。
「お店のもの勝手に借りてすみません いつか必ずお金はらいます」
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」