日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『ゾンビが出たので学校やすみ。』

『ゾンビが出たので学校休み。』第2巻
むうりあん 竹書房 ￥820+税
（2015年12月7日発売）

ゾンビにはいろいろな解釈がある。
この作品のゾンビは、人を襲うよりも先に、生前の記憶にそって動くことを優先する。
なので、人間が目の前にいても、たとえば店員のゾンビなら、人を襲うよりも先に、レジの仕事を優先する。
『アイアムアヒーロー』でも生前の日常をゾンビが繰りかえしている習性は表現されているが、完全優先というのはちょっと珍しい。

長野から修学旅行にやってきた女の子、4人が秋葉原のハマダカメラという家電量販店に取り残されてしまった。
都心は突然のゾンビパンデミックで、人間はみな関東から疎開。そのため残ってしまった4人は脱出手段がない。
恐怖するも、ゾンビたちは意外と襲ってこない。

秋葉原が舞台のため、描かれるゾンビたちの生前の習慣のバリエーションがおもしろい。
レイヤーでコスプレをするゾンビ。それをカメラでとるゾンビ。さらにブログにアップしようとするゾンビ。
ショップの前で並んでいるゾンビ。同人ショップで本を探しているゾンビ。アイドルグループ・JPNが好きでトンキホーテに大挙するゾンビ。
即売会経験者ゾンビは、札を持って歩くと、整列してついてくる。
ゲームセンターでは小銭をばらまくと「オトシモノ」と拾ってくれる。
なんか……いいゾンビばっかりですね。

とはいえ極限状態にはかわりない。
2巻では、2人で生き延びていた佐伯美鈴と三平マリカ、自衛隊三等陸曹の金井静佳、ヤンキーチーム「虎魔無道（こまんどー）」なども登場。一気に人間側がにぎやかになる。
同時に、社畜で家に帰れないゾンビ、元ヤンキーだった隠れオタクゾンビ、ゲームセンターの伝説プレイヤーゾンビなど、ゾンビバリエーションも増えている。

「人間は食べ物ばかりに餓えてるわけじゃないから」
アキバ系ゾンビギャグのこの作品、ふとこのモノローグを念頭に入れながら読むと、なんだか急に切なくなってくる。
彼女たちはゾンビを殺さない。
それは、彼女たちがゾンビを、ひとりの人間としてとらえているからだ。

＜文・たまごまご＞
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」