365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月2日は原子炉の日。本日読むべきマンガは……。
『エルフェンリート』 第2巻
(『デジトポリス』所収)
岡本倫 集英社 ¥505+税
1942年12月2日、アメリカ・シカゴ大学の実験用小型原子炉「シカゴ・パイル1号(CP-1)」において、世界で初めてウラン核分裂の持続的な連鎖反応実験に成功した。
時はまさに第二次世界大戦のまっただなか。CP-1は枢軸国の原子爆弾開発を追うかたちでスタートした「マンハッタン計画」に組みこまれ、開発にたずさわったのがイタリアから亡命したノーベル物理学者エンリコ・フェルミだったことから、ワシントンの計画本部には「イタリア人の航海士が新大陸へ達した。現地人は友好的だった」といういかにもアメリカっぽい暗号電文が送られたという。新大陸発見にかけたりして、うれしそうですね。
CP-1を大型化したプルトニウム生産炉で生成されたプルトニウムの一部は「Mk.3型原子爆弾」製作に使用された。Mk.3とは耳慣れない名だが、こっちの名前は聞いたことがある人もいるだろう。
通称「ファットマン」――そう。1945年8月9日に長崎市に投下された原子爆弾である。
今でこそ原子力発電のコアである原子炉だが、当時はプルトニウム生成に特化した施設で、その危険性については昨今の日本をとりまく状況からもよく知られるところだ。もし、故意にそこを破壊しようとたくらむ者がいれば、それはもう“テロリズム”だ。
側頭部から生えた2本の角とベクターと呼ばれる特殊能力を持つ女性型ミュータント・ディクロニウスの少女・ルーシーと普通の大学生・コウタの奇妙な同居生活を描いた岡本倫の人気作品『エルフェンリート』のなかの読み切り短編『デジトポリス』では、原子炉内にしかけられた爆弾をめぐる爆弾処理班の物語が描かれる。
新米ボムスイーパー(爆弾処理人)の佐々木は、民間ながらプロも認める一流ボムスイーパー・カスミに弟子入りすることに。当初はお気楽なカスミに閉口気味だった佐々木だったが、爆弾テロで両親を喪った彼女の悲惨な過去を知り、テロを憎む彼女に惹かれるようになる。
佐々木とカスミの“最後の事件”となるのが原子炉内にしかけられたRDX(=軍用爆薬の一種)20キログラムの解除。
爆弾解除のためなら命を落とすことすら惜しまないカスミは、汚染された原子炉建屋内でとんでもない行動をとる!! ……といえばだいたい想像はつくと思うが、どんなカワイコちゃんでもズバズバ切り刻んだりボコボコに殴られたりするえげつない描写で定評のある著者にしては、“救い”のあるオチでしめている。
『エルフェンリート』とはまったく関連性はない読み切りですが、よろしければお読みいただきたい。
<文・富士見大>
レンコンはなんといっても筑前煮の乱切りしたヤツだろうと思う編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わり、最近作は『「仮面ライダー」超解析 平成ライダー新世紀!』、「東映ヒーローMAX Vol.54」。ただいま絶賛発売中の『「ウルトラマン超解析」大怪獣激闘ヒストリー!』にも参加。すごくおもしろいですよ!!