365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月5日はアルバムの日。本日読むべきマンガは……。
『ご近所物語』 第3巻
矢沢あい 集英社 ¥390+税
吐く息の白さが一層際立つようになった12月5日、本日はアルバムの日。
アルバムや文房具の製造販売を行っているナカバヤシ株式会社が、1年の思い出となる写真の整理を促進する日として制定したそうな。
アルバムと聞いて、真っ先に頭に浮かんだマンガは『ご近所物語』。
当時9歳だった筆者にも、「このマンガは、『りぼん』に載っているほかのマンガとは違う空気感がある」みたいなことはなんとなくわかった。
コマを割る太い線や、独特の書き文字、足の長いキャラクター、そして何より、夢のようにかわいい洋服。
当時の筆者にとって矢沢あいのマンガは、ちょっと背伸びした気分で読める、とびきりおしゃれなマンガだったのだ。
第3巻では、アルバムにまつわるエピソードから、実果子の抱くパパへの思慕が表現される。
幼なじみのツトムとつきあうことになり、初めて迎えた誕生日。
ツトムがプレゼントしてくれたのは、小さな写真を入れられる手作りのコンパクトだった。
「写真何入れよっか」
ウキウキと考えたあと、実果子はアルバムをめくる。
自分がほしい写真はないとわかっていながら、実果子は家中のアルバムを必死にめくる。
ママとパパが離婚したあと、家族のアルバムからパパが写っている写真だけがすべてなくなった。実果子は、ママの弱さを責めたりしない。
パパの写真を隠したママ。
離れて暮らすようになってからも、ママと実果子に写真を送り続けたパパ。
「あたしパパの写真が欲しいな」
実果子が一度も口にできなかった思いに気づいたツトム。
ツトムの行動をきっかけに、実果子一家のわだかまりはだんだんとほぐれていくのだが、それは4巻のはなし。
第3巻では、たった1枚の写真を求める実果子がいじらしくて、痛々しい。
もう二度と会えないのかもしれない、だからせめて写真を――。
実果子の必死さが、人の心のよりどころとなる写真の力を鮮やかに浮き立たせる。
スマートフォンで誰もが気軽に写真を撮ることができる今だからこそ、読む人に語りかける力の強いエピソードだ。
<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。