日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『100万円の女たち』
『100万円の女たち』 第4巻
青野春秋 小学館 ¥552+税
(2016年11月30日発売)
『俺はまだ本気出してないだけ』の青野春秋の最新作は、男性1人と女性5人(+ねこ1匹)が共同生活をする、というもの。
設定だけ聞くと、シェアハウスっぽくて楽しそうだが、女性たちは謎の「招待状」で集まってきた――となると、ちょっと不気味である。
そうしたシチュエーション・サスペンスともいうべき作品。
売れない小説家・道間慎(みちま・しん)の自宅に、「招待状」に呼び寄せられて、世代も背景もバラバラな女性が5人集まってきた。
「招待状」の条件は、女性限定ということと、月に100万円を道間に支払うということ。
もちろん、道間は、そんな条件は出していないのだが、いわれるがまま部屋を明け渡し、女性たちの食事などの世話をすることにした。
こうした奇妙ながらも淡々とした日常を描くのに、青野のシンプルな絵柄は最適である。
だれが、どういう意図で「招待状」を出したのか――は、謎のまま物語は進む。
そのうちに女性たちの素性も徐々に明かされ、それぞれが100万円を払える理由がはっきりしてくる(このあたりの女性1人ひとりのドラマがいい)。
また、道間は小説がベストセラーになり、急に「時の人」となるのだが、その背後には「招待状」の送り主の画策がかいま見える。
そして、ついに「招待状」の送り主は牙をむき、道間と女性たちに対して、様々な攻撃が加えられるようになる……。
奇妙な共同生活は、11月発売の第4巻、つまり本巻にてフィナーレを迎えた。
意外性に満ちた幕切れを、みなさんにも味わってほしい。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。現在発売中の「ミステリマガジン」2017年1月号(早川書房)、2016年のミステリコミックの総括を執筆。また、同誌のコミック評では、池田邦彦『グランドステーション ~上野駅鉄道公安室日常~』を紹介しています。