『新黒沢 最強伝説』第3巻
福本伸行 小学館 ¥552+税
(2014年7月30日発売)
ホームレスたちを守るため、暴走族との凄絶な乱闘の果てに永眠したと思われた黒沢が、8年に渡る昏睡状態から奇跡のカムバック。
今度はどんな伝説を築き上げるのかと思いきや、なんと自らがホームレスに!
試食品のテイクアウトをめぐってスーパーの店員と殴り合い、高級住宅街のゴミ捨て場で同業者と縄張り争いを繰り広げ、拾ったケーキを賭けてネットカフェ難民の若者と三角ベースに興じる……そんな日々だ。
負のエネルギーを武器に大立ち回りを演じた黒沢も、今や50代半ば(黒沢の誕生日は作者の福本伸行と同じ1958年12月10日)。
積み上げてこなかった人生、何かをなしえなかった人生と向き合うたびにやるせなさが募り、涙がボロボロとこぼれる。黒沢だけではなく、同世代の登場人物たちもまたしかりだ。
社会に縛られない“自由”を手に入れた反面、食糧難や猛暑で容赦なく生命の危機が迫ってくる。とはいえ人並み外れた生命力を持つ黒沢は、ちょっとやそっとじゃくたばらない。
互助会の関係を結ぶホームレス仲間も増えてきた。生活基盤がリバーサイドで構築されつつあるが、はたして、このままホームレスとして人生を終えてしまうのか?
いや、そうではないだろう。
苛烈なホームレス生活を経て、黒沢が真の再生を果たしたとき、新たな最強伝説が始まるに違いない。
……それにしてもリバーサイドでのドタバタが長すぎて、一向に浮上の目が見えてこないんだよなぁ。ちょっと不安。
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
「ドキュメント毎日くん」