365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月24日はクリスマスイブ。本日読むべきマンガは……。
『スナーク狩り』 第1巻
宮部みゆき(作) オオイシヒロト(画) 新潮社 ¥514+税
12月24日は、いわずもがなクリスマス・イブ。
2016年は3連休とも重なっているため、ハッピーな人はよりハッピーに、そうでない人はより孤独に……と、なんだか“幸せ格差”が激しいような気もする年。しかし、ご安心ください! マンガには、さびしいクリスマス・イブを過ごす人が本当に数えきれないほど描かれており、共感できる作品にはこと欠きません。
まぁ、日常が舞台の連載作品であれば、ほぼ間違いなくクリスマス関連のエピソードが1本ぐらいはあったりするのだが、数あるクリスマス・イブ関連作品のなかから本日オススメしておきたい作品は『スナーク狩り』。
非常に美しく「クリスマス・イブの夜に始まり、1年後のクリスマス・イブに幕を閉じる物語」であり、全3巻というコンパクトなボリュームも一夜で読むにはピッタリだろう。
原作は宮部みゆきの同名小説。それだけに、短いなかにも濃厚な心理描写や、予想外の展開が楽しめるのも納得の一品。
新宿ゴールデン街で小さなバーのバーテンダーをしている主人公は、「どうせクリスマスの予定はないだろう」と決めつけられ、イブの夜に店を任されているロンリーボーイ。
そんな彼のもとにひとりで現れた女性客は、いかにもいわくありげな雰囲気満点で、いかにも偽名くさい「アリス」という名を残して去っていく。
そんな彼女に心ひかれる主人公だったが、彼女には「復讐」という強い目的が──。
偶然出会った2人の人生を、1挺の散弾銃がねじ曲げていくサスペンス作品だ。
なお、タイトルにある「スナーク」とは、ルイス・キャロルの詩に登場する正体不明の怪物のこと。それをつかまえた人間は、あっという間に消え去ってしまうとされており、復讐心や悪意に囚われて狂っていく人間たちを描く物語にはふさわしい怪物ではなかろうか。
……と、ここまで読んで「いくらなんでもイブの夜に読むには悲惨すぎる話じゃね?」と思われるかもしれないが……まぁ、結末は読んでのお楽しみ。
孤独の果てに、救われることも世の中にはあるのかも?
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。