365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月12日はアグリー・クリスマス・セーター・デイ。本日読むべきマンガは……。
『新装版 魔太郎がくる!!』 第6巻
藤子不二雄A 秋田書店 ¥419+税
本日12月12日は、このところ日本でもおなじみになりつつある「アグリー・クリスマス・セーター・デイ」。
いわゆる「ダサい柄のセーター」をあえて着るという、アメリカでのイベントデーである。
もともとは特にきっかけとなる出来事があったわけではなく、「親や祖母にダサいセーターを着せられた」という、一種の“あるあるネタ”のようなものだったのだが、それが映画『ブリジット・ジョーンズの日記』の劇中でピックアップされたことなどから2000年代に入ってシーズンイベントと化し、今やアメリカではブームを超えて完全に定着。
2011年に12月12日が「アグリー・クリスマス・セーター・デイ」に制定されてからはますますイベント化に拍車がかかり、有名ブランドも続々と「あえて悪趣味」な新作セーターを投入するなど、ファッショントレンドや経済効果にも大きな影響を与えるほどの盛り上がりを見せている。
そして日本でも、ハロウィンの次に来る波は意外とコレ!? という予測もあったり。
そんなイベントが本格上陸する前に、ぜひとも「アグリー・ファション」のお手本としてオススメしておきたいのが『魔太郎がくる!!』である。
いちおう説明しておくと、本作は何かとイジメのターゲットにされがちな中学生・浦見魔太郎が主人公。
学校はいうに及ばず、道を歩けばカツアゲされ、旅行先ではことごとく変人に絡まれ……と、まさに災難の連続。
しかし、「このうらみ はらさでおくべきか」のワードが出たらもう最後、様々な「恨み念法」によっていじめた側が手痛すぎる逆襲を受けるハメに。
ただし、トラップをしかけるなどの手段で物理的に相手を叩きのめすことも頻繁にあり、ぶっちゃけ、わりとカジュアルに人が死にます!
そんな毎度毎度の復讐譚もさることながら、もうひとつ注目していただきたいのが登場人物のファッション。
魔太郎が恨み念法を行う際に着用しているバラ柄のシャツからして尋常でないことは明確だが、魔太郎がファッションモデルに起用される「ドラキュラ・マントはドラキュラを呼ぶ」や、お気に入りのブルース・リーTシャツを奪われてしまう「恐怖のTシャツ!!」など、ファッションがテーマとなったエピソードも少なくない。
本来ならば、そのエピソードをTシャツの日(7月20日)にピックアップしたかったのだが、現在流通している単行本からは削除されているため、せめてセーターにからめて本日に紹介を……という事情もありつつ、もちろんナチュラルにアグリーなセーターを着たキャラも多数登場。
なかでも、群を抜いてアグリーなセーター姿を披露するのは、「白いスキー場の黒い心」のエピソードに登場するスキーコーチ・黒木だ。
星とストライプ柄のセーターを着用した彼は、スキー講習中の魔太郎の態度に立腹。受講者の前で魔太郎を笑い者にしただけでは飽き足らず、夜中に死と隣りあわせの個人レッスンを強要するなど、陽気すぎるデザインのセーターとはうらはらに、陰湿極まりない性格を爆発させている。
特に、ストックのとがったほうをズラリと並べたコースで滑らせるのは、まさに「行きすぎた指導」以外の何物でもないのだが……ま、そのまま無事にすむハズもなく、ぶっちゃけ、わりとカジュアルに死にます!
何やら、違う意味でアグリーな気もするエピソードだが、『魔太郎がくる!!』のファッションセンスの一端をご堪能いただければ幸いである。
そして、いつの日か「アグリー・クリスマス・セーター・デイ」をネタにした恨み念法が見られたら最高なんですけどね!
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。