『PARマンの情熱的な日々 どこへでも飛んでいく編』
藤子不二雄A 集英社 \1,600+税
(2015年3月5日発売)
本作『PARマンの情熱的な日々』は、藤子不二雄Aのエッセイコミックである。
エッセイコミックという性質上、パーティに出席したとかゴルフに行ったとか銀座で飲んだとか、基本的には著者の身辺がつづられていくのだが、なにしろ藤子A先生と同席するメンツのすごいこと。
最新4巻でも『ゴルゴ13』のさいとう・たかを、『銀河鉄道999』の松本零士、『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦、直木賞作家・山田詠美などなど、各界の著名人が作中に登場し、藤子A先生の交友範囲の広さをまざまざと見せつけてくれる。
写真とマンガとエッセイ文が混在した独特のフォーマットを取り、集英社「ジャンプSQ」創刊以来、とうとう7年以上に渡る長期連載作品となった。
4巻の見どころは、なんといっても藤子A先生の入院だ。
2013年に大腸がんの摘出手術で入院した藤子A先生の「入院ルポ」が丁寧に描かれていくのだが、藤子A先生は術後にICUに移されたあと、ある夢を見る。その夢というのが、『まんが道』と『愛…しりそめし頃に…』という「満賀道雄サーガ」を愛してきた読者には、号泣ものなのだ。だって、“あの人”が出てくるんだもの。
その夢が影響してか、退院してからの数回は思い出話が多くなる。
アニメ制作会社「スタジオゼロ」設立当初の話や、藤子ファンならご存知のアニメ版『鉄腕アトム』第34話「ミドロが沼の巻」事件の顛末などなど、『愛…しりそめし頃に…』以降の「史実」が描かれていく。
『愛…しりそめし頃に…』は、フィクションとしての「満賀道雄サーガ」としての結末であるため、史実とは時系列の異なるフィクショナルな終わり方をしたが、『PARマンの情熱的な日々』で語られる過去は、まぎれもなく藤子A先生による手記。両方を読み比べて見ると、多角的な味わい方ができるはずだ。
また、入院前の第62話「東京タワーVSスカイツリー」では、藤子A先生が東京タワーを訪れている様子が描かれているが、『愛…しりそめし頃に…』のラストシーンが東京タワーだったことを思いおこせば、この第62話はそのための取材だったことがわかるし、このとき藤子A先生が感傷的になっていたことも想像にかたくない。
ちなみに巻末には特別ふろくとして「週刊少年サンデー 30周年記念増刊号」に掲載された「プロゴルファー猿FOREVER」も収録されている。
巻末に別のマンガが再録されるしかけも『愛…しりそめし頃に…』からの伝統だし、長年のファンには「藤子不二雄ランド」を思い起こさせるものだ。ドレミファファンタジー、ソラシドドラ~マチック!
藤子A先生、どうかお体ご自愛ください。われわれは、いつまでもアナタのファンですから。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama