日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは『もっと！抱かれたい道場』

『もっと！抱かれたい道場』
中川ホメオパシー おおかみ書房 ￥1,296+税
（2015年9月30日発売）

あの問題作の完結編が、紆余曲折を経て発売！

抱かれたい道場とは、抱かれたい男を目指すノボル君が道場師範である舵原の熱き指南を受けるホモ・サピエンスアカデミーである！

……という、いっさいなんの説明にもなっていない紹介文で、一部スキモノ界隈で圧倒的に有名な中川ホメオパシーのデビュー作『抱かれたい道場』。
2010年に秋田書店の「ヤングチャンピオン烈」で連載開始された本作は、2012年に単行本1巻が発売されたものの、2014年春の連載終了後に最終巻が発売されていなかった。
その間もファンの間から最終巻刊行の声が多くよせられていたのだが、連載終了から1年半の時を経て、インディーズ出版レーベル・おおかみ書房から未収録分をすべて入れた完結編『もっと！抱かれたい道場』として発売されることとなった。

ご存じの方も多いとは思うが、中川ホメオパシーといえば、「ショートページのギャグマンガを大の大人が2人がかりで描く」という、マンガ界有数の頭の悪い分業行為に絶対の自信を持つギャグマンガユニット。
もちろん本作も、いちおう「モテ指南マンガ」の体で話は進んでいくものの、当然実用性や共感は知ったこっちゃないという、特濃の一冊となっている。

主人公のノボルくんは、師範である舵原先生の教えに従ったばっかりに、モテを求めて冒頭から脳みそが犬になったり植物人間になったり宇宙の神秘に身を包んだ超生物になったり。
死んだと思ってたら元気だったりするし、師範の舵原先生も睾丸に直接九九を教えこんで知能の高い精子を作り出そうとしたりするなど、基本的に「問答無用で笑える」以外になんの役にも立たず、本当に作者はこの作品をとおして我々に何を伝えたかったのかわからない。
作者はこの作品をとおして我々に何を伝えたかったんだろう。

そもそも根本的に、（根本敬の系譜に連なる）特殊マンガとも言うべき原作に、超絶筆致の作画を重ねているため、「劇画調の絵柄なのに出てくる女の子だけは全員メチャクチャかわいくてお得感があるけど、展開が異次元」という嫌がらせのようなスタイルが、勝手にこの人たちのなかで完成してしまっているため、1冊読み終えた時、我々に言えることはただひとつしかない。
すなわち、「汚れてもいい。生きねば」だ。

そんなこんなで、巻末には第1話につながるエピソード0などの描き下ろしもあり、ファンなら絶対に手に入れておきたい1冊となっている。

最後に、購入方法の注意を。
冒頭でも書いたとおり本作は、連載していた秋田書店からではなくインディーズ出版・おおかみ書房から刊行されるため、おおかみ書房の通販ページからの通販購入が中心となる。
一般書店やAmazonなどではとり扱われないため、注意してほしい。

我々は、こういうマンガをバカみたいに笑って読んで、傷つきながらも強く生きていかねばならない。

＜文・劇画狼＞
漫画始末人。ひどいマンガ紹介ブログ「なめくじ長屋奇考録」と、インディーズ出版レーベル「おおかみ書房」をやっています。上で書いたような紹介文を誰かに書いてもらって、「うお～、インディーズレーベルなのに『このマンガがすごい！WEB』で取り上げてもらったぞ！」と騒ぎたかったんだけど、誰も書いてくれなかったのでしょうがなく自分で書きました。毎日を楽しく生きています。好きなマンガは『将太の寿司』。
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