『田中圭一最低漫画全集 神罰1.1』
田中圭一 イースト・プレス \999+税
(2015年4月5日発売)
手塚治虫、藤子不二雄、永井豪、本宮ひろ志、福本伸行、西原理恵子、宮崎駿――。
マンガの神々と呼んで差し支えないだろう、この巨匠たちの新作をまとめたアンソロジー集がもし存在したとすれば、マンガファンにとって必読書となるはずだ。
そんな夢想を、1冊という単位のみならず、1本の短編のなかですら交配させてしまう書物として、2002年、『神罰 ―田中圭一最低漫画全集』が刊行された。 ではこの夢のコラボに、なぜ「神罰」「最低漫画」などのものものしい名が与えられているのか――神々のタッチをみごとなまでに模して描かれるその内容が、もっぱら悪夢のような下ネタであったためだ……。
巨匠たちの描くのと瓜ふたつのキャラクターたちが繰り広げる、最低最悪の乱痴気騒ぎ。
そんな『神罰』が、この2015年に増補版『神罰1.1』としてよみがえった。
「訴えます!!」「ライオンキングは許せても、田中圭一は許せません!!」という手塚治虫先生の長女・手塚るみ子さん直筆のオビ文もそのままに、ページ数も1割増で(ちょうど火の鳥のように)性感もとい、生還したのだ。
「マンガ」の懐の広さを思い知らされる。
しかるべきときに雷に打たれていてもなんらおかしくない罪深き作者をいまだ生き延びさせ、こともあろうに増補版の刊行まで許してしまうとは。
マンガとは、なんと自由奔放で荒唐無稽なものなのか。
とはいえやはり、今からでもなんらかの神罰がくだるべきではないだろうか。
もしかすると、その罪状がまだじゅうぶんに知られていないのかもしれない。
『神罰1.1』の刊行を機に、その大罪の告発のため(?)、より広く作品が読まれることを願わずにはいられない。
<文・高瀬司>
批評ZINE「アニメルカ」「マンガルカ」主宰。ほかアニメ・マンガ論を「ユリイカ」などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
Twitter:@ill_critique
「アニメルカ」