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『フルーツ宅配便』 第2巻 鈴木良雄 【日刊マンガガイド】

2016/12/30


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『フルーツ宅配便』


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『フルーツ宅配便』 第2巻
鈴木良雄 小学館 ¥552+税
(2016年11月30日発売)


ゆず、レモン、スイカ、あんず、ミカンなど、女の子に果物の源氏名をつけている地方都市のデリヘル「フルーツ宅配便」を舞台にした人間ドラマの第2巻。

生々しいプレイのシーンはほぼ皆無。それどころか裸すら出てこない。
様々な事情を抱えた女性たちが、勇気をふりしぼってデリヘルの世界に飛びこみ、何かを変え、何かを失っていく物語が1話完結で描かれる。

この第2巻は、奥さんに先立たれた初老の客が初風俗でズブズブとハマっていく「ビワ」、シングルマザーの嬢が風俗界のタブーを犯す「スダチ」、アニメオタクの童貞青年が彼女との初夜を前にして練習がわりに利用する「ドラゴンフルーツ」など、9つのエピソードで構成されている。

フルーツ宅配便の男性スタッフたちが、嬢や客に対して適度な距離感で接している点がすばらしい。
トラブルに介入することもあるが、深入りすることは決してない。そのため貧困層の悲惨な事案を扱っていても、どこかサラっとしており、べたべたなお涙頂戴にはならないのだ。

いつもはボケッとしている大食漢のマサカネも、得体の知れないオーナーのミスジも、いざとなればケンカ上等で、じつに頼もしいところにもシビれる。
そのかわり主人公のサキタ(会社の倒産をきっかけに地元に出戻り、ミスジの誘いで雇われ店長に就任)は、これといった特徴のないごくごく平凡な男で、読者目線に立ってくれる。

登場する嬢たちは、学生や主婦といった、どこにでもいる身近な女性ばかり。そんな彼女たちが、(金銭的に)のっぴきならない事情を抱えた時の“駆けこみ寺”としても機能しているデリヘルだからこそ、「フルーツ宅配便」のような優良業者が増えてほしいと切に願う。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口を凌ぐライター。

単行本情報

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